相続税専門税理士の富山です。
今回は、貸家建付地評価における「一時的な空室」について、お話します。
相続税申告における貸家建付地の評価方法
貸家の敷地は、安く評価することができます。
貸していない場合の評価(自用地評価)が1,000万円で、借地権割合40%・借家権割合30%とすると、
1,000万円△1,000万円×40%×30%=880万円
となります。
ただし、これは原則として、空室がない場合です。
4室(すべて50㎡)あるアパートの1室に入居者がいて、残りの3室はずっと空室で入居募集もしていない、というような場合には、
賃貸割合=50㎡(=1室)/200㎡(=50㎡×4室)=25%
ですので、
1,000万円△1,000万円×40%×30%×25%=970万円
となり、満室に比べて評価額が高くなります(相続税が高くなります)。
ただし、この3室すべての空室が「一時的な空室」に該当すれば、
賃貸割合=200㎡(=4室)/200㎡(=50㎡×4室)=100%(880万円)
で評価することができます。
「アパート・マンション」は適用OKだが「一戸建ての貸家」は適用不可
上記の「一時的な空室(一時的に空室となっている部分の床面積を実際に賃貸されている部分の床面積に加えて算定)」の取扱いは、その建物がアパートやマンションの場合には適用があっても、一戸建ての貸家の場合には適用がありません。
想う相続税理士秘書

通達もよく読むとそうなっている
「それはあなたの主観的な考え方なんじゃないの?アパートと一戸建てで、空きがあった場合の取扱いが異なるのはやっぱりオカシイ!」とお思いになる方もいるかもしれません。
そこで、通達を見てみます。
財産評価基本通達(一部抜粋加工)
26 貸家建付地の評価
貸家(94《借家権の評価》に定める借家権の目的となっている家屋をいう。以下同じ。)の敷地の用に供されている宅地(以下「貸家建付地」という。)の価額は、次の算式により計算した価額によって評価する。
その宅地の自用地としての価額△その宅地の自用地としての価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合
この内容は、上記でお話しました。
この算式における「借地権割合」及び「賃貸割合」は、それぞれ次による。
(2) 「賃貸割合」は、その貸家に係る各独立部分(構造上区分された数個の部分の各部分をいう。以下同じ。)がある場合に、その各独立部分の賃貸の状況に基づいて、次の算式により計算した割合による。
①/②
①:Aのうち課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計
②:当該家屋の各独立部分の床面積の合計(A)
賃貸割合についても、上記でお話しましたが、太字の部分にご注目ください。
この「賃貸割合」が床面積で計算されるのは、「『各独立部分』がある場合」です。
「各独立部分」があるのは、アパートやマンションの場合です(「101号室:鈴木さん」・「102号室:渡辺さん」・「201号室:佐藤さん」・「202号室:小林さん」という感じで独立しています)。
一戸建ての貸家にはありません(1棟を丸々、高橋さんに貸しています)。
2 上記算式の「賃貸されている各独立部分」には、継続的に賃貸されていた各独立部分で、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められるものを含むこととして差し支えない。
「各独立部分」がある場合には、「一時的に賃貸されていなかったと認められるものを含む」とあります。
「一時的な空室」の取扱いがあるのは、「各独立部分」がある場合に限定される、ということです。
同じ話になりますが、「各独立部分」があるのは、アパート・マンションです。
一戸建ての貸家にはありません。
ですから、「一時的な空室」は、アパート・マンションにしか適用がないのです(一戸建ての貸家には適用されません)。
想う相続税理士
