【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

法人が所有している土地を個人がタダで借りて建物を建てたらどうなる?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、借地権に関する裁決事例について、お話します。

出典:TAINS(F0-3-303)(一部抜粋加工)
平16-09-10裁決


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親の土地をタダで借りて家を建てると借地権が発生する?

個人間の土地の使用貸借に係る使用権の価額は、零として取り扱う旨定めている

子供が親の土地に家を建てる、ということはよくあると思います。

土地は親のもので、家は子供のものです。

家の所有者である子供から見ると、土地は自分のものではありませんから、親から借りている、ということになります。

このような場合、(親子ですから)子供は親に地代を払ったりしないでしょう。

使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて(個別通達)(一部抜粋加工)
(趣旨)
建物又は構築物の所有を目的とする使用貸借に係る土地に関する相続税及び贈与税の取扱いについて所要の整備を図ることとしたものである。
(使用貸借による土地の借受けがあった場合)
1 建物又は構築物(以下「建物等」という。)の所有を目的として使用貸借による土地の借受けがあった場合においては、借地権(建物等の所有を目的とする地上権又は賃借権をいう。以下同じ。)の設定に際し、その設定の対価として通常権利金その他の一時金(以下「権利金」という。)を支払う取引上の慣行がある地域(以下「借地権の慣行のある地域」という。)においても、当該土地の使用貸借に係る使用権の価額は、零として取り扱う
この場合において、使用貸借とは、民法(明治29年法律第89号)第593条に規定する契約をいう。したがって、例えば、土地の借受者と所有者との間に当該借受けに係る土地の公租公課に相当する金額以下の金額の授受があるにすぎないものはこれに該当し、当該土地の借受けについて地代の授受がないものであっても権利金その他地代に代わるべき経済的利益の授受のあるものはこれに該当しない。

民法(一部抜粋加工)
(使用貸借)
第五百九十三条 使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。

個人間でタダで土地の貸し借りをした場合、借地権は発生しません。

無償の貸し借り(使用貸借)によって借地権が発生し、相続税や贈与税が課税される、ということはありません。

法人が絡むと話は別になる

上記の個別通達には次のような前文があります。

標題のことについては、次のとおり定め、今後処理するものからこれによることとしたので、通達する。
なお、この取扱いは、個人間の貸借関係の実情を踏まえて定めたものであるから、当事者のいずれか一方が法人である場合のその一方の個人については、原則として、従来どおり法人税の取扱いに準拠して取り扱うこととなることに留意されたい。

土地の賃貸人または賃借人が法人(「片方が個人でもう片方が法人」)の場合には、個人であったとしても、「法人税の取扱いに準拠して取り扱う」ことになります。

法人税の取扱いになると借地権が発生し相続税や贈与税が課税される

法人税法上の「借地権若しくは地役権の設定」には、使用貸借の名の下に他人に建物等を建てさせた場合も含まれており、法人税基本通達13-1-3において、法人が借地権の設定等により他人に土地を使用させた場合において、通常収受すべき権利金を収受せず、しかも、その収受する地代の額が相当の地代の額に満たないときは、原則として借地権利金の認定課税を行うことを明らかにしている

法人税基本通達13-1-7において、法人の場合にも土地の使用貸借があり得るという立場に立って、当事者が税務署長に対して将来借地を無償返還する旨を届け出ることを条件に、相当の地代の額の認定が行われるにとどめ、借地権利金の認定課税は行わないことを併せて明らかにしている

貸地人が法人である本件においては、上記のとおり、使用貸借であっても税法上借地権が存在すると認めるのが相当であり、当事者から原処分庁に対して無償返還届出書が提出されていないのであるから、相続財産としての借地権の評価を要することになる

「土地の無償返還に関する届出書」を提出していれば、課税上は借地権が発生しないのですが、提出していないのであれば、借地権が発生するため、A株式会社の土地の上に、A株式会社の社長Bさんがタダで土地を借りて建物を建てていた場合、社長Bさんには借地権が発生しているため、社長Bさんが亡くなったら、その借地権は相続税の課税対象となります。

想う相続税理士

A株式会社が所有している土地の一部が、「借地権」として亡くなった社長Bさんの帰属する、ということになれば、社長BさんがA株式会社の株式を所有していた場合(社長BさんがA株式会社の株主だった場合)、A株式会社の株式を相続財産として評価する上でもそれを加味する必要がありますので、ご注意を(100%で計上すると過大になります)。

原処分庁は、本件土地の上に存する借地権について、相続財産であるとしてその評価額を24,392,768円(地積824.08㎡×正面路線価74,000円×借地権割合0.4)であると認定し、これに伴って、■■■■■に対する出資金の評価額を6,013,750円減額する本件相続税の更正(取得財産の価額に18,379,018円を加算)をした。