【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

市街化調整区域の土地に地積規模の大きな宅地の評価を適用できるか役所調査する方法

相続税専門税理士の富山です。

今回は、地積規模の大きな宅地の評価について、お話します。


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最低でも20%は評価が下がる地積規模の大きな宅地の評価

財産評価基本通達(一部抜粋加工)
20-2 地積規模の大きな宅地の評価
地積規模の大きな宅地(三大都市圏においては500㎡以上の地積の宅地、それ以外の地域においては1,000㎡以上の地積の宅地をいい、次の(1)から(3)までのいずれかに該当するものを除く。以下本項において「地積規模の大きな宅地」という。)で14-2《地区》の定めにより普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区として定められた地域に所在するものの価額は、15《奥行価格補正》から前項までの定めにより計算した価額に、その宅地の地積の規模に応じ、次の算式により求めた規模格差補正率を乗じて計算した価額によって評価する

三大都市圏なら500㎡、三大都市圏以外なら1,000㎡以上の土地の場合、一定の要件に該当すれば、「規模格差補正率」の適用により、土地の評価が下がります。

広ければ広いほど、土地の評価が下がりますが、ギリギリ500㎡・1,000㎡でも、20%評価が下がります。

市街化調整区域は宅地開発できないから適用対象外?

国税庁HP(一部抜粋)
「財産評価基本通達の一部改正について」通達等のあらましについて(情報)
⑴ 「地積規模の大きな宅地の評価」の概要
イ 「地積規模の大きな宅地の評価」の趣旨
「地積規模の大きな宅地の評価」では、新たに「規模格差補正率」を設け、「地積規模の大きな宅地」を戸建住宅用地として分割分譲する場合に発生する減価のうち、主に地積に依拠する次の①から③の減価を反映させることとした
① 戸建住宅用地としての分割分譲に伴う潰れ地の負担による減価
② 戸建住宅用地としての分割分譲に伴う工事・整備費用等の負担による減価
③ 開発分譲業者の事業収益・事業リスク等の負担による減価

上記にあるとおり、地積規模の大きな宅地の評価は、「戸建住宅用地として分割分譲する場合」に、道路や公園等にしなければならない部分(売れない土地・潰れ地)が発生する等のデメリットを考慮したものです。

ということは、「市街化を抑制すべき区域」である市街化調整区域は、原則として宅地開発はできませんので、地積規模の大きな宅地の評価は適用できないはずです。

したがって、下記のとおり、市街化調整区域に所在する宅地は、適用対象外と規定されています(上記の「次の(1)から(3)までのいずれかに該当するものを除く」の(1)が下記)。

(1) 市街化調整区域(都市計画法第34条第10号又は第11号の規定に基づき宅地分譲に係る同法第4条《定義》第12項に規定する開発行為を行うことができる区域を除く。)に所在する宅地

しかし、一定の場合には、この宅地開発が可能な場合があるため、上記のカッコ書きの中で、一定の「開発行為を行うことができる区域」「適用対象外から除外」しています。

つまり、市街化調整区域でも、地積規模の大きな宅地の評価が可能な場合がある、ということです。

宅地開発できれば市街化調整区域でもOKという訳ではない!

上記のカッコ書きの中の「開発行為を行うことができる区域」という言葉の前には、「都市計画法第34条第10号又は第11号の規定に基づき」という言葉があります。

これが重要です。

市街化調整区域にあって、宅地開発が可能だったとしても、それを可能とするのが「都市計画法第34条第10号又は第11号の規定に基づ」いている必要があります。

他の規定に基づいて宅地開発が可能な場合には、適用対象外であるとした裁決があります。

出典:TAINS(J134-4-08)(一部抜粋加工)
令06-03-06公表裁決
請求人らは、相続により取得した各土地(本件各土地)は、市街化調整区域のうち都市計画法第34条第12号の規定に基づき宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域(12号区域)に所在しており、宅地の分割分譲が可能であって、分割分譲に伴う減価が発生する土地であるため、財産評価基本通達20-2《地積規模の大きな宅地の評価》(本件通達)に定める「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することができる旨主張する
しかしながら、本件通達に定める「地積規模の大きな宅地」は、「戸建住宅用地としての分割分譲が法的に可能であり、かつ、戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域に所在する宅地」の範囲をもって定められているところ、都市計画法第34条第12号に相当する開発行為としては、分家に伴う住宅、収用対象事業の施行による移転等による建築物、社寺仏閣、研究施設等の建築物の用に供するものが予定されているのであるから、同号の規定に基づく開発行為の対象となる宅地は、仮に宅地分譲に係る開発行為が可能な区域に所在していたとしても、本件通達が適用対象とする当該範囲に含むべきものではないとしたものと解するのが相当である。したがって、当該範囲に含まれるとする市街化調整区域のうち都市計画法第34条第10号及び第11号の各規定に基づき宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域に所在する宅地と当該範囲に含まれないとする12号区域に所在する宅地とで本件通達上異なる取扱いを定めていることは合理的なものであって、本件各土地を「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することはできない。

市区町村役場で役所調査をする場合の留意点

市街化調整区域の土地が、地積規模の大きな宅地の評価の適用対象かどうかについて役所調査をする場合、「この地域(土地)は、宅地開発が可能ですか?」と確認するのはダメ(それで「可能です」と言われたとしても、適用対象外の可能性がある)ということです。

まず、その市区町村に「都市計画法第34条第10号及び第11号の各規定に基づき宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域」「あるかどうか」を確認しましょう。

上記の裁決に基づいて判断した場合、ここで「同区域」がないと言われれば、それで終了です。

次に、「同区域」がある、と教えてもらった場合、「それがどこか(どの辺りか)」を確認しましょう。

役所調査に行く前に、評価対象地がどこに(どの辺りに)あるかは把握しているでしょうから、その教えてもらったエリアに「入っているか」「もしかしたら入りそうか」「全然違う場所か」を検討しながら、「具体的に評価対象地が『同区域』に所在するかどうか」を教えてもらいましょう。

想う相続税理士

所轄の税務署が、「○○市には『都市計画法第34条第10号及び第11号の各規定に基づき宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域』がない」と把握していると、その市内の市街化調整区域の土地に地積規模の大きな宅地の評価を適用して申告したら、すぐに修正申告を勧奨する電話がかかってくるかもしれませんので、ご注意を。