相続税専門税理士の富山です。
今回は、「マイホーム特例」「相続空き家の特例」の適用可否について、お話します。
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売買契約と引渡しが年をまたいだら土地建物の譲渡はどっちで申告する?
国税庁HP(一部抜粋)
譲渡所得の申告時期
譲渡所得は、原則として、譲渡した資産の引渡しがあった日(注)の属する年の所得として申告する必要があります。
なお、例外として、売買契約などの効力発生の日(農地法の転用等の許可や届出がないと所有権を移転できない農地等については、売買契約などを締結した日)の属する年の所得として申告することもできます。
(注) 「引渡しがあった日」は、その資産について当事者間で行われる支配の移転の事実(例えば、所有権移転登記に必要な書類等の交付)に基づいて総合的に判定することになりますが、原則として、譲渡代金の決済が終わった日より後にはなりません。
令和7年にご自宅の土地建物の売買契約を結び、令和8年に引き渡した場合、その売買に係る儲け(譲渡所得)は、令和7年分(「契約年分」)の所得税の確定申告で計上してもいいですし、令和8年分(「引渡年分」)の確定申告で計上してもいい、ということになります。
自宅建物を取り壊して更地を売却したらマイホーム特例は適用できない?
ご自宅の土地建物を売却する際、更地の方が売れやすい(または、買い手が更地の状態での売買を希望している)、ということで、ご自宅の建物を取り壊して、更地の状態で土地を売却するとします。
この場合、「マイホーム特例」(マイホームを売ったときの特例・居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例)は適用できるのでしょうか?
租税特別措置法関係通達(一部抜粋加工)
35-2 居住用土地等のみの譲渡
その居住の用に供している家屋(当該家屋でその居住の用に供されなくなったものを含む。以下この項において同じ。)を取り壊し、その家屋の敷地の用に供されていた土地等を譲渡した場合(その取壊し後、当該土地等の上にその土地等の所有者が建物等を建築し、当該建物等とともに譲渡する場合を除く。)において、当該土地等の譲渡が次に掲げる要件の全てを満たすときは、当該譲渡は、措置法第35条第2項各号に規定する譲渡に該当するものとして取り扱う。ただし、その居住の用に供している家屋の敷地の用に供されている土地等のみの譲渡であっても、その家屋を引き家して当該土地等を譲渡する場合には、当該譲渡は、同項各号に規定する譲渡に該当しない。
(1) 当該土地等の譲渡に関する契約が、その家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、その家屋を居住の用に供されなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡したものであること。
(2) その家屋を取り壊した後譲渡に関する契約を締結した日まで、貸付けその他の用に供していない当該土地等の譲渡であること。
上記に該当すれば、土地のみの譲渡でも、マイホーム特例を適用することができます。
自宅建物取壊し+土地売買契約後に引渡しをする前に死亡した場合の注意点
一人暮らしだったAさんが老人ホームに入居することになったため、ご自宅の建物を取り壊し、土地のみの売買契約を締結したのですが、引渡しをする前にお亡くなりになったとします。
この場合でも、上記にあるとおり、亡くなった方の「契約年分」の所得税の確定申告、つまり、準確定申告で譲渡所得を計上することができ、要件を満たせば、マイホーム特例の適用も可能です。
相続空き家の特例は更地の譲渡でも可能だが?
Aさんの相続人である長男Bさんが、その土地を相続し、引き渡したとします。

上記の記事でもお話したとおり、「特定事由」に該当すれば、亡くなる直前にご自宅に住んでいなくても(老人ホームに入居していても)、要件を満たせば、「相続空き家の特例」を適用することができます。
相続人の方等が亡くなった方の元ご自宅を売却した場合、一定の要件に該当すれば、「相続空き家の特例」を適用することができ、同特例は、土地+建物の売却だけではなく、建物を取り壊した後の土地のみの売却でも適用できるケースがあります。
「引渡年分」の所得税の確定申告(Bさんの確定申告)において譲渡所得を計上した場合、「相続空き家の特例」は適用できるのでしょうか?
国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋加工)
No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
特例の適用を受けるための要件
(1)売った人が、相続または遺贈(死因贈与を含みます。以下同じです。)により被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を取得した相続人(包括受遺者を含みます。以下同じです。)であること。
上記にあるとおり、特例の適用を受けるためには、土地「及び」建物を相続で取得している必要があります。
亡くなった方が既に建物を取り壊していて、土地のみを相続した場合には、「相続空き家の特例」は適用できません。
想う相続税理士
また、発生する所得税は、相続税の申告において「債務控除」の対象となります。