相続税専門税理士の富山です。
今回は、不動産を個人間で売買する場合の売買金額の注意点について、お話します。
親が子に不動産を安く売ったら法律違反?
ある親が土地を所有しています。
子がその土地を欲しがっているのですが、贈与すると子に贈与税が課税されてしまいます。
そこで、親は時価よりも安い金額でその土地を子に売却しました。
この場合、その売買取引は法律違反ではありませんが、子に税金がかかる場合があります。
「著しく低い価額」だと贈与税が課税される
相続税法(一部抜粋)
第7条 贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合
著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、当該財産の譲渡があつた時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があつた時における当該財産の時価との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与により取得したものとみなす。
上記の親が子に土地を売却した時の取引金額(売買金額)が、時価に比べて「著しく低い価額」の場合には、その差額部分に贈与税が課税されます。
土地を路線価で売買したらどうなる?
上記の親子間の取引金額(売買金額)が、路線価で評価した相続税評価額だったら、それは「著しく低い価額」に該当しないのでしょうか?
国税庁HP(一部抜粋加工)
負担付贈与又は対価を伴う取引により取得した土地等及び家屋等に係る評価並びに相続税法第7条及び第9条の規定の適用について
1 土地及び土地の上に存する権利(以下「土地等」という。)並びに家屋及びその附属設備又は構築物(以下「家屋等」という。)のうち、負担付贈与又は個人間の対価を伴う取引により取得したものの価額は、当該取得時における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。
ただし、贈与者又は譲渡者が取得又は新築した当該土地等又は当該家屋等に係る取得価額が当該課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合には、当該取得価額に相当する金額によって評価することができる。
(注) 「取得価額」とは、当該財産の取得に要した金額並びに改良費及び設備費の額の合計額をいい、家屋等については、当該合計金額から、評価基本通達130((償却費の額等の計算))の定めによって計算した当該取得の時から課税時期までの期間の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額をいう。
2 1の対価を伴う取引による土地等又は家屋等の取得が相続税法第7条に規定する「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合」又は相続税法第9条に規定する「著しく低い価額の対価で利益を受けた場合」に当たるかどうかは、個々の取引について取引の事情、取引当事者間の関係等を総合勘案し、実質的に贈与を受けたと認められる金額があるかどうかにより判定するのであるから留意する。
「個々の取引について取引の事情、取引当事者間の関係等を総合勘案し、実質的に贈与を受けたと認められる金額があるかどうかにより判定する」とあります。
「時価の何%未満だと『著しく低い価額』」のようには定められていません。
相続税評価額で売買しておけば大丈夫なのでしょうか?
(注) その取引における対価の額が当該取引に係る土地等又は家屋等の取得価額を下回る場合には、当該土地等又は家屋等の価額が下落したことなど合理的な理由があると認められるときを除き、「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合」又は「著しく低い価額の対価で利益を受けた場合」に当たるものとする。
親が土地を購入し、その後、その土地を子に売却する場合、その間に土地が値下がりしていた等の合理的な理由がなければ、購入金額よりちょっとでも安く売却してしまったら、それは「著しく低い価額」に該当する、としています。
相続税評価額だから大丈夫、ということはありません。
想う相続税理士秘書

家屋を固定資産税評価額で売買したらどうなる?
国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋)
No.4602 土地家屋の評価
対象税目
相続税、贈与税
概要
家屋
固定資産税評価額に1.0を乗じて計算します。
したがって、その評価額は固定資産税評価額と同じです。
上記のとおり、相続税の申告において、建物(家屋)は
固定資産税評価額×1.0
で評価します。
つまり、
相続税評価額=固定資産税評価額
です。
固定資産税評価額は、毎年、市区町村役場から送られてくる固定資産税の課税明細書で確認することができます。
上記の親が子に、土地ではなく建物を売却する場合、建物は価値(評価)がどんどん下がります(減価します)から、土地とはちょっと違います。
建物については、この固定資産税評価額で売買しておけば大丈夫なのでしょうか?
上記の通達には、そのようには書かれていません。
上記通達再掲(重複)
ただし、贈与者又は譲渡者が取得又は新築した当該土地等又は当該家屋等に係る取得価額が当該課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合には、当該取得価額に相当する金額によって評価することができる。
(注) 「取得価額」とは、当該財産の取得に要した金額並びに改良費及び設備費の額の合計額をいい、家屋等については、当該合計金額から、評価基本通達130((償却費の額等の計算))の定めによって計算した当該取得の時から課税時期までの期間の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額をいう。
どのように書かれているかというと、ザックリ言えば、「当初の取得金額等から経過年数に応じた償却費相当額を控除した金額」が「通常の取引価額に相当すると認められる場合」には、それでもOK、ということです。
想う相続税理士