相続税専門税理士の富山です。
今回は、下記の判決について、お話します。
出典:TAINS(Z271-13580)(一部抜粋加工)
令和3年6月24日判決
相続税の申告期限までに遺産分けの話し合いがまとまらなかった場合
相続税の申告及び納税は、亡くなったことを知った日(通常の場合は死亡日)の翌日から10ヶ月以内にしなければなりません。
遺産分けの話し合いがまとまらなくても、その期限は延長されません。
このような場合には、各相続人等が法定相続分等に従って財産を取得したものとして相続税の計算をし、申告及び納税をします。
その後に遺産分けの話し合いがまとまった場合
その後、遺産分けの話し合いがまとまり、その遺産分割の内容が、上記の申告(法定相続分等による分割)の内容と異なる場合には、その話し合いによりまとまった遺産分割の内容で(実際に分割した財産の金額に基づき)修正申告・更正の請求(ザックリ言うと「申告のやり直し」)をすることができます。
修正申告は、相続税が高くなる申告のやり直しであり、更正の請求は、相続税が安くなる申告のやり直しです。
同じやり直しでも、この場合の更正の請求は、分割があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内という期限があります。
遺産分割のやり直しと財産評価のやり直しは別の話
このように、相続税法32条1号及び35条3項1号は、同法55条に基づく申告の後に遺産分割が行われて各相続人の取得財産が変動したという相続税特有の後発的事由が生じた場合において、更正の請求及び更正について規定する国税通則法23条1項及び24条の特則として、同法所定の期間制限にかかわらず、遺産分割後の一定の期間内に限り、上記後発的事由により上記申告に係る相続税額等が過大となったとして更正の請求をすること及び当該請求に基づき更正がされた場合には他の相続人の相続税額等に生じた上記後発的事由による変動の限度で更正をすることができることとしたものである。その趣旨は、相続税法55条に基づく申告等により法定相続分等に従って計算され一旦確定していた相続税額について、実際に行われた遺産分割の結果に従って再調整するための特別の手続を設け、もって相続人間の税負担の公平を図ることにあると解される。
以上によれば、相続税法32条1号の規定による更正の請求においては、上記後発的事由以外の事由を主張することはできないのであるから、上記のとおり一旦確定していた相続税額の算定基礎となった個々の財産の価額に係る評価の誤りを当該請求の理由とすることはできず、課税庁も、国税通則法所定の更正の除斥期間が経過した後は、当該請求に対する処分において上記の評価の誤りを是正することはできないものと解するのが相当である。また、課税庁は、相続税法35条3項1号の規定による更正においても、同様に、上記の評価の誤りを是正することはできず、上記の一旦確定していた相続税額の算定基礎となった価額を用いることになるものと解するのが相当である。
4ヶ月以内に更正の請求をしても、「国税通則法所定の更正の除斥期間」(法定申告期限から5年)を経過している場合には、「一旦確定していた相続税額の算定基礎となった個々の財産の価額に係る評価」のやり直し申告はできない、ということです。
想う相続税理士