相続税専門税理士の富山です。
今回は、コンビニエンスストアの駐車場部分に対する貸家建付地評価の是非が争点となった裁決事例について、お話します。
相続税申告における土地評価の考え方
相続財産の中に、コンビニエンスストアに貸している土地があるとします。
コンビニエンスストアの店舗の敷地は「宅地」です。
コンビニエンスストアの駐車場は「雑種地」です。
財産評価基本通達(一部抜粋)
7 土地の評価上の区分
土地の価額は、次に掲げる地目の別に評価する。
(1) 宅地
(10) 雑種地
上記の規定の考え方に基づいて判断すると、店舗の敷地と駐車場は別に評価する、ということになります。
しかし、上記の規定には続きがあります。
ただし、一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合には、その一団の土地は、そのうちの主たる地目からなるものとして、その一団の土地ごとに評価するものとする。
通常は、店舗の敷地と駐車場は一体として利用されているため、この取扱いにより、主たる地目=店舗の敷地=宅地として、「店舗の敷地+駐車場」全体を1つの土地として貸家建付地評価(貸家の敷地の用に供されている宅地として評価)します。
賃貸借契約が別になっている駐車場を貸家建付地ではないとした事例
出典:TAINS(F0-3-356)(一部抜粋加工)
平11-12-20裁決
上記の裁決事例では、コンビニエンスストアの「建物(+土地)の賃貸借契約」と、「駐車場等土地(=来客用駐車場、納品車専用駐車場及びごみ置場等)の賃貸借契約」が別になっていました。
同公正証書によって賃貸借されている土地の部分(すなわち借家権の目的となっている土地の部分)は特定できない
本件建物の賃貸借とB土地(駐車場等土地)の賃貸借はそれぞれ別個に継続されている
同公正証書に係る建物と賃貸借期間の始期を同じくする平成元年土地賃料改定書類に基づいてB土地の賃貸借を更新している
上記の「建物の敷地」と「駐車場等土地」は別評価だとされました。
A土地を貸家建付地として評価することは相当であるが、B土地は、駐車場等土地の賃貸借に基づいて賃貸借されていることから、評価基本通達86に定める賃借権の目的となっている雑種地として評価するのが相当
納税者側は、駐車場等土地を含めて一体利用されていた、と主張しました。
B土地を本件建物の賃貸借に伴う敷地として利用しなければ営業ができなかった
このことは、請求人が当審判所に対して提出した航空写真に、商品保管のためのコンテナの設置が撮影されていることからも明らかである
B土地も本件建物の敷地として利用されていた
納税者側の主張は、下記のように退けられました。
請求人が主張するようにB土地が営業上不可欠のものであったこと、また、コンテナ等の存在することが本件B土地の賃貸借契約の性質に影響を与えるものではない
この点に関する請求人の主張にはいずれも理由がない
契約書が別でも一体評価の可能性はあるものと思われる
上記の裁決事例から、契約書が別だと土地の評価(権利)も別になる、とは言い切れないものと思われます。
契約書の内容や、契約内容の変更の推移、土地の位置状況等によって、話は変わってくるものと思われます。
想う相続税理士