相続税専門税理士の富山です。
今回は、「生計一親族ではない」として別居親族の小規模宅地等の特例が認められなかった裁決事例から、ポイントとなる記載をピックアップして、「生計一」とは何なのか、について、お話します。
出典:TAINS(J75-4-38)(一部抜粋加工)
平20-06-26裁決
相続税における「生計一」とは?
所得税においては、
所得税基本通達(一部抜粋)
2-47 生計を一にするの意義
法に規定する「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではないから、次のような場合には、それぞれ次による。
(1) 勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとする。
イ 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合
ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合
(2) 親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。
と明確な規定がありますが、相続税においては、
「生計を一」の意義について、相続税法及び措置法上の解釈が明確にされていなくとも、所得税法等他の法律で定義された解釈と別異に解釈するのは相当ではない。
としていて(本件調査担当職員の説明)、所得税と相続税では税目が異なると言えども、上記の所得税基本通達の内容は、相続税の申告においても参考になる、と言えます。
生計一親族とは「生活費を負担し合う」関係にある親族
請求人は本件被相続人の生活費を負担することはなく、また、本件被相続人が請求人の生活費を負担することもなかった(だからダメ)。
本件特例にいう「生計を一にしていた」とは、日常生活の資を共通にしていることと解され、またこれについては社会通念により判断すべきところ、請求人は、本件被相続人と同居しておらず、また、請求人と本件被相続人との間で日常生活のために費用を負担し合う状況にはなかったと認められ、両者が日常生活の資を共通にしていたとは認められない。
生計を一にしていた親族とは、被相続人と同一の生活共同体に属し、必ずしも同一の家屋内で起居を共にする必要はないが、少なくとも日常生活に係る費用やその他生活の糧を支弁し合うような親族を指す
本件特例にいう「生計を一にしていた」とは、同一の生活単位に属し、相助けて共同の生活を営み、ないしは日常生活の資を共通にしている場合をいい、「生計」とは、暮らしを立てるための手立てであって、通常、日常生活の経済的側面を指すものと解される。したがって、被相続人と同居していた親族は、明らかにお互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、一般に「生計を一にしていた」ものと推認されるが、別居していた親族が「生計を一にしていた」ものとされるためには、その親族が被相続人と日常生活の資を共通にしていたことを要し、その判断は社会通念に照らして個々になされるところ、少なくとも居住費、食費、光熱費その他日常の生活に係る費用の全部又は主要な部分を共通にしていた関係にあったことを要すると解される。
ちょっとでも生活費を負担すればいい、という訳ではありません。
なお、本件宅地の固定資産税に相当する額は請求人が負担していた(それで(それだけで)OKという訳にはいかない)。
亡くなった方の口座からお金を引き出し自分のお金と混ぜればお財布が一緒?
本件被相続人は病院のべッドで寝たきりであり、自分で預金を引き出すことも病院の支払もできず、独立して暮らせなかった。
そのため、請求人が本件被相続人の預貯金のキャッシュカードを保管し、本件被相続人の口座から出金した現金を請求人の生活費と合算して管理し、請求人と本件被相続人の生活に係るすべての入出金を請求人が決定していた。そして、本件被相続人の入院費もこの合算した生活費から支払っていた。
亡くなった方が預金を引き出せないため、代わりにお金を引き出す、というのは、「お金を管理している」ということであって、それをもって費用を負担し合っていることにはならない、としています。
また、仮に請求人が本件被相続人の財産を管理していたとしても、そのことと日常生活の資を共通にしていることとは直接的な関係はない。
本件被相続人名義の普通預金口座から出金した現金をいったん請求人手持ちの現金と合わせ、その後に入院費を支払っていたとしても、それをもって日常生活に係る費用の全部又は主要な部分を共通にしている関係にあったと認めることはできない。
想う相続税理士