【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続財産を売却する予定がある場合の遺産分割の注意点

相続税専門税理士の富山です。

今回は、分割することが難しい相続財産があるような場合に、その財産を売却して換金し、その後、その売却代金を分けっこすることを前提としている場合の遺産分割方法について、お話します。


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分けようにも分けられない財産もある

遺産分けは、必ずしも法定相続分に従ってやらなければならない、というモノではありません。

しかし、ある程度、公平に分けようとした場合に、財産の内容によっては、それが難しい場合があります。

極端な例を挙げると、相続財産が土地1ヶ所、みたいな場合です。

相続人が長男・次男の2人の場合、その土地を2つに切って(分筆して)それぞれ相続する、という方法もあり得ますが、切った後の土地を活用できない場合には、その方法はあまり有効ではありません。

このような場合に、その土地を売却して、その売却代金を分ける、という方法が考えられます。

代償分割だと実際には難しい(誤差に納得すればOK)

上記の場合、長男がその土地を全部相続し、その代わり次男にお金を渡す、という分割方法があります。

「代償分割」です。

感覚としては、評価額1億円の土地を全部長男が相続し、その代わりとして次男に5,000万円(1億円×1/2)を渡す、というような感じです。

この場合、

  1. 土地の相続税評価額が1億円でも、時価が1億円とは限らない、7,000万円でしか売れないかもしれないし、1億5,000万円で売れるかもしれない、前者だと次男が喜び、後者だと次男が怒りそうだ
  2. 長男がその土地を現金化(売却)すると、その儲けに対して所得税が課税されるため、手取りが減る、1億円ピッタリで売れた場合、その中から次男に5,000万円払って、さらに所得税まで払うことになり、次男より損をする(その他にも費用がかかる)
というような問題が生じます(ある程度の誤差はいいよ、と納得すれば問題ありません)。

換価分割を活用する

遺産分割の方法には、「換価分割」というモノがあります。

これは、相続財産を売却して、その売却代金を分ける、という方法です。

未分割(共有状態)のまま売却して、売却代金を分けっこします。

亡くなった方の名義のままでは売却できませんので、相続人の名義に変える(相続登記する)必要があります。

この場合、共有名義で登記したり、便宜的に1人の名義で登記したりします。

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「お金(売却代金)をもらうことになっている」ということは、その売却代金に対する相続税を納めるのかというと、そうではありません。

相続税の課税価格(課税対象)は、
換価分割の対象となる相続財産の相続税評価額×売却代金配分割合
で計算します。

相続税評価額1億円の土地を売却して、その売却代金を長男:次男=40%:60%で分ける場合、相続税の課税価格は、
長男:1億円×40%=4,000万円
次男:1億円×60%=6,000万円

となります。

土地が2億円で売れて、長男・次男が8,000万円・1億2,000万円を手に入れたとしても、相続税の課税対象は、上記の金額(4,000万円・6,000万円)です。

特例の適用への影響に留意すること!

売却予定の財産だとしても、必ずしも換価分割を選択した方がいい、とは限りません。

譲渡所得の特別控除(ザックリ言うと所得税の非課税)の適用を受けることができる方が単独で相続して売却した方が、特別控除を最大限に活用できる場合があります。

逆に、特別控除の適用を受けることができる方が複数いらっしゃる場合には、換価分割で共有で相続した方がいい場合もあります。

特例の適用という面では、相続税の小規模宅地等の特例にも影響を及ぼします。

換価分割を選択せず、同特例の適用要件を満たす方に単独で相続してもらった方が、相続人全員の相続税が安くなる場合もあるのです。

想う相続税理士

売却した場合の譲渡所得(売却益)の計算においては、一定の要件を満たせば、相続税の一部が経費になります(「取得費加算の特例」)ので、確定申告の際にお忘れなく。