相続税専門税理士の富山です。
今回は、生命保険契約の申告もれがあった場合に、過少申告加算税が課税されない「正当な理由」があったかどうかが争われた裁決事例について、お話します。
出典:TAINS(F0-3-912)(一部抜粋加工)
裁決日:令06-02-13裁決
他の相続人名義の生命保険契約が見つかったらどうなる?
この裁決事例では、亡くなった方のお子さん2人(兄・弟)が相続人でした。
相続税の申告をした後、税務調査で、新たに生命保険契約の存在が見つかりました。
その生命保険契約は、契約者と被保険者が弟さんで、保険料は亡くなった方が全額負担していました。
税務署は、この生命保険契約に関する権利は、弟さんが相続により取得したものとみなされる「みなし相続財産」に当たるとして、更正処分と過少申告加算税の賦課決定を行いました。
生命保険の申告漏れに係る「正当な理由」が否定されたポイント
この裁決で大きな争点となったのが、過少申告加算税が課税されない「正当な理由」があるかどうか、という点です。
兄は、「生命保険契約の契約者は弟であり、自分にはその存在も、保険料を誰が負担していたかも分からなかった」と主張しました。
さらに、「生命保険会社に問い合わせたとしても、個人情報保護法の関係で回答は得られないはずだし、弟は生命保険契約の存在を隠していたので、調べようがなかった」として、過少申告になったことについて自分には責任がないと訴えました。
これに対して審判所は、申告納税制度における納税者の責任を、次のように明確に述べています。
申告納税制度においては、納税者がその判断と責任において、申告義務を負うもの
そのうえで、亡くなった方の所得税の申告状況や保険料控除の記載、過去の取引金融機関や税理士の関与状況などから「生命保険会社を推測することは十分可能だった」と判断しました。
つまり、弟や税理士へ確認したり、推測される生命保険会社に対して弟を通じて照会したりといった、一定の調査努力は本来求められていた、という考え方です。
また、「弟が生命保険契約の存在を隠していた」という点についても、
それは飽くまで請求人及び本件弟との間の主観的事情にすぎず
として、過少申告加算税がかからない「正当な理由」には当たらないと判断されました。
結果として、この裁決では、生命保険契約に関する権利を相続財産に含めなかったことについて、「真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があるとはいえない」とされ、過少申告加算税の賦課決定は適法と結論づけられています。
相続の現場では、「他の相続人が隠していたから」「家族が教えてくれなかったから」といった事情は、感情的には納得しがたいものがあります。
しかし、申告納税制度という仕組みの中では、「自分で調べるために、どこまで努力したか」が、非常に厳しく見られるということを示した裁決といえるでしょう。
想う相続税理士
相続税の計算の仕組み上、財産の計上もれがあると、その財産を取得した方だけでなく、その財産を取得していない他の相続人や受遺者の方の相続税も追加で課税されますので、ご注意を。
