相続税専門税理士の富山です。
今回は、「人身傷害補償保険」の保険金を受け取った場合の課税関係について、お話します。
想う相続税理士秘書
出典:TAINS(相続事例北陸会100068)(相続事例北陸会100069)(一部抜粋加工)
人身傷害補償保険の保険金の「基本ルール」を押さえる
自動車保険に付帯している「人身傷害補償保険」は、今では多くの方が加入している身近な保険です。
自動車事故でケガをしたり、残念ながらお亡くなりになった場合の人的損害を、過失割合にかかわらず実損害額の範囲で補償してくれる仕組みです。
被保険者の死亡により保険金請求権者が人身傷害補償保険金を取得した場合には、「原則として」保険料の負担者に応じて所得税、相続税または贈与税の課税関係が発生します。
さらに、人身傷害補償保険では、保険会社が事故の相手方に代位して損害賠償請求をする仕組みが取られているため、保険金の一部は「実質的に損害賠償金と考えられる部分」として、別の取扱いがされます。
相手方の過失割合に対応する部分や、親族間事故で自賠責保険の被害者直接請求権に対応する部分などは、「損害賠償金の性格を有する金額」とされ、所得税・相続税・贈与税の課税対象から除かれます。
同じ「人身傷害保険金」でも、すべてが一律に課税されるわけではなく、内訳ごとに性格を見極める必要がある、というのがこの制度の特徴です。
死亡前の損害と死亡による損害で課税関係が変わる
出典:TAINS(相続事例北陸会100068)(相続事例北陸会100069)(一部抜粋加工)
上記の相談事例では、通勤中の事故により被保険者の甲さんが入院し、その3日後に亡くなったケースが取り上げられています。
甲さんは人身傷害保険に加入しており、遺族は次のような保険金を受け取りました。
死亡逸失利益、死亡による精神的損害、葬儀費(⑤~⑦ 計41,200,000円)
このうち、甲さんの死亡「まで」の損害に対する①~④の保険金について、相談事例では次のように説明されています。
甲の遺族が受け取った①~④の保険金は甲の遺族が保険金請求権を承継して受け取ることから本来の相続財産となり、相続税が課税されます。
もし甲さんが生前に①~④の保険金を受け取っていれば、心身に加えられた損害等に対する保険金として所得税は非課税となる部分です。
しかし、甲さんが亡くなった後に「保険金請求権」という財産を相続人が引き継いで受け取る場合、その請求権は「本来の相続財産」として相続税の対象になる、という整理です。
一方で、死亡による損害に対する⑤~⑦の保険金については、甲さんの過失割合分と、事故の相手方の過失割合分とで扱いが分かれます。
事故の相手方の過失割合に対応する部分は、本来なら相手方に対して行う損害賠償請求に相当するものであり、相続税の対象から除かれる
また、この事例では、労災保険から支給される葬祭給付(1,500,000円)については、労働者災害補償保険法および相続税基本通達の規定により、相続税の非課税とされています(保険金から控除されます)。
同じ「死亡に伴い受け取るお金」であっても、その性質によって税金の扱いが大きく異なることがわかる事例です。
想う相続税理士
