【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

ファイナンス・リース契約は相続税の申告でも財産計上し未払リース料等は債務控除する?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、ファイナンス・リース契約があった場合の相続税申告に関する裁決事例について、お話します。

出典:TAINS(F0-3-225)(一部抜粋加工)
裁決年月日:平20-04-22裁決


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ファイナンス・リース契約の将来の支払額は債務控除の対象?

本件は、亡くなった方(被相続人)が発酵舎と発酵機のファイナンス・リース契約を結んでいたケースです。

被相続人の死亡時点では、まだリース期間の途中で、支払期日が到来していないリース料や、リース期間終了後に支払うことになっている譲渡代金が残っていました。

相続人は、この「支払期日未到来のリース料」「リース期間終了後の譲渡代金」の合計額(未払金残高)を、相続税の債務控除として全額差し引きたいと考えました。

そのため、当初申告をした後に、更正の請求を行い、本件リース契約に基づく未払金残高を「被相続人の債務」として控除できると主張しました。

相続人側の発想としては、典型的なファイナンス・リース契約であり、実質的には「物を買うための借金」なのだから、契約時点で将来分も含めた支払金額の全額が被相続人の債務になっているはずだ、というイメージだったといえます。

これに対して税務署側は、更正をすべき理由がないとして、未払金残高の全額を債務控除として認めませんでした。

そこで、相続人は異議申立てをし、さらに審査請求へと進み、国税不服審判所で争われたのが今回の裁決です。

相続税申告におけるファイナンス・リース契約の取扱い

この裁決では、まず、相続税の申告において債務控除が認められるための大前提が整理されています。

裁決では、次のような趣旨の記載があります。

相続税法第13条及び同法第14条の規定によれば、相続税法の課税価格の計算上控除される債務は、被相続人の債務で相続開始の際現に存し、相続又は遺贈により財産を取得した者の負担に属する金額であることを要するとともに、確実と認められる債務でなければならない旨規定されており、確実と認められる債務とは、債務が存在するとともに債権者の債務の履行を求める意思が客観的に認識し得る債務をいうと解される。

ここから分かるポイントは、ザックリ言うと次の2つです。

被相続人の債務であること
相続開始の時点で現に存在し、しかも「確実な債務」であること

本件リース契約について、審判所はまず、この契約の法律上の性質を検討しています。

契約書の内容を見ると、リース期間中の物件の所有権は貸主側にあり、借主である被相続人は、物件を使用収益する代わりに、各支払期日にリース料(貸付料)を支払うという形になっていました。

さらに、一定の要件を満たすと中途解約も可能であり、その場合は、その後の期間に対応する貸付料の支払い義務は免れることになります。

これらから、本件契約は「物を買うための借金」ではなく、あくまで「賃貸借契約」であり、リース料は物件の使用収益の対価である、と認定されています。

その上で、相続開始後の期間に対応するリース料や、将来支払うことになっている譲渡代金は、被相続人の債務として相続開始の時点に「現に存する債務」として確実なものではないと判断されました。

結果として、未払金残高のうち「相続開始後の期間に係るリース料」「譲渡代金」の部分は、相続税の債務控除の対象外とされたのです。

所得税や法人税では売買扱いだけど・・・

では、相続税の計算上、本件リース契約に関して一切何も債務控除が認められなかったのかというと、そうではありません。

審判所は、本件契約が賃貸借契約であることを前提にしつつ、相続開始日の時点までにすでに経過している期間に対応するリース料については、被相続人が負担すべき債務として認めています。

具体的には、最後の支払期日までに支払われていた分の翌日から、相続開始日までの期間に対応するリース料(既経過貸付料)について、その日数に応じて日割計算を行い、約145万円が「確実と認められる債務」として債務控除の対象になると判断されました。

また、相続人は、ファイナンス・リースは実質的には物の購入なので、所得税や法人税で認められているように、契約時点で売買があったものとして扱うべきだ、とも主張しました。

しかし、裁決では、所得税法施行令や法人税法施行令でファイナンス・リースを「売買があったもの」と擬制しているのは、あくまでそれぞれの税金の計算をするための特別なルールにすぎず、私法上の契約の性質(賃貸借契約であること)を変えるものではないとされています。

したがって、リース物件そのものも相続財産にはならず、発酵舎の造成工事費用なども、土地の価値に反映されているに過ぎないとして、別途相続財産として計上することは認められませんでした。

想う相続税理士

利益の期間計算を行う所得税や法人税と、相続開始時点の経済的価値を課税対象とする相続税では、取扱いが異なりますので、ご注意を。