相続税専門税理士の富山です。
今回は、過去に行った相続対策が「前提の変化」でズレてしまう場面と、ズレを放置したときのリスクについて、お話します。
相続対策は「前提」が変わると効果も変わる
相続対策は、実行した瞬間に結果が確定するものではありません。
多くは、相続が発生して初めて「狙いどおりだったか」が分かります。
つまり、当初の前提が変わると、当時は正解だった手当が、将来は別の結果を生むことがあります。
典型例が、税制や評価ルールなどの制度変更です。
生前贈与の扱いが変わったり、相続財産の評価の考え方が調整されたりすると、当初の計算がそのまま通用しないことがあります。
また、民法上の制度が整備されることで、配偶者の住まいを守る方法が増えるなど、選択肢そのものが変わることもあります。
制度が変わると、「何を」「誰に」「どの手段で」渡すのが合理的かが変わり得ます。
相続対策は節税だけが目的ではありません。
納税資金の準備、争いの回避、生活の安定など、目的が複数あるからこそ、前提が変わったときに「目的と手段のズレ」が生じやすい点に注意が必要です。
家族構成が変わると、遺言・分け方の設計がズレる
相続対策は「家族関係」を土台に作ります。
ところが家族は、年月とともに状況が動きます。
たとえば、想定していた順番と異なるかたちで家族が亡くなることがあります。
再婚、離婚、同居・別居、介護の状況の変化などで、当初想定していたバランスが崩れることもあります。
さらに、養子縁組などにより相続人の範囲や順位が変動するケースもあります。
このような変化があると、遺言書で指定した内容が「今の家族の実態」に合わなくなることがあります。
また、遺言書が古いままだと、相続人が増減したときに、結果として特定の人に負担が偏ることもあります。
そして重要なのが、遺言書の作り直し自体にも注意点があることです。
形式が整っていないと無効になったり、内容があいまいだと解釈で揉めたりします。
特に高齢期は、後から「判断能力がなかったのでは」と争点化しやすいため、作成手続の丁寧さも含めて検討が必要です。
気持ちや資産状況が変わると「渡したい相手・割合」も変わる
相続対策は、最後は「気持ち」に行き着きます。
当時は円満だった関係が、時間の経過で変わることは珍しくありません。
たとえば、支援してきた子との関係が悪化したり、逆に、これまで頼っていなかった子が介護を担うようになったりします。
そうすると、「誰に何を渡したいか」「不公平感をどう調整するか」という優先順位が変わってきます。
この変化を放置すると、遺言や贈与の内容が現状と合わず、遺族の不満や争いの火種になります。
もう一つは、経済状況の変動です。
資産運用の結果や不動産市況の変化で、財産の中身が大きく動くことがあります。
自然災害や事故で建物が損傷し、想定していた財産構成が崩れることもあります。
資産が増えた場合は納税負担が重くなりやすく、減った場合は「遺すはずだった金額が足りない」という問題が起こり得ます。
相続対策は、財産の「額」だけでなく「中身」が重要です。
預貯金が減って不動産比率が上がれば、分け方が難しくなります。
逆に、現金が増えれば遺留分や公平感の問題が前面に出ることもあります。
状況が変わったときに、遺族が困らない設計になっているかを点検することが、結果的に一番のリスク管理になります。
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