相続税専門税理士の富山です。
今回は、小規模宅地等の特例における「生計を一にする」要件が争われた裁決事例について、お話します。
出典:TAINS(F0-3-876)(一部抜粋加工)
令04-09-20裁決
小規模宅地等の特例で問題になる「生計を一にする」とは?
小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)は、一定の条件を満たすと土地の評価額を大きく減らせる制度です。
ただし、誰が土地を相続しても使える訳ではなく、要件のひとつとして「被相続人(亡くなった方)と生計を一にしていた親族」が取得した場合に限られるパターンがあります。
この裁決は、「生計を一にしていた」といえるかを、日常生活の「経済面」の結びつきでかなりシビアに見ています。
同居していない親族が「生計を一にしていた」と認められるには、少なくとも、居住費・食費・光熱費など、日常生活にかかる主要な費用を共通にしていた関係が必要だ、という整理です。
この趣旨から、措置法第69条の4第3項第2号ハは、本件特例が適用される「特定居住用宅地等」を、被相続人と「生計を一にしていた」親族が取得した宅地等に限定しているが、ここにいう「生計を一にしていた」とは、同一の生活単位に属し、相助けて共同の生活を営み、あるいは日常生活の資を共通にしていたことをいい、また、「生計」とは、暮らしを立てるための手立てであって、通常、日常生活の経済的側面を指すものと解される。
これによれば、被相続人と同居していた親族は、朝らかにそれぞれが独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、通常は、「生計を一にしていた」と認められるものと考えられるが、他方、被相続人と同居していなかった親族が「生計を一にしていた」と認められるためには、当該親族が被相続人と日常生活の資を共通にしていたと認められることを要し、そのように認められるためには、少なくとも、居住費、食費、光熱費その他日常生活に係る費用の主要な部分を共通にしていた関係にあったことを要するものと解するのが相当である。
離れに住んでいた養子夫婦。争点は「生活費の主要部分は共通か」
本件では、被相続人は母屋に居住していました。
相続人のうち養子夫婦は、同じ敷地内ではあるものの、母屋とは独立した「離れ」で生活していました。
つまり、「同じ敷地だから実質同居」と言い切れる訳ではなく、同居ではない前提で「生計一」を立証できるかが焦点になります。
請求人側(養子夫婦側)は、生活費を相当程度共通にして助け合っていた、という方向で主張しています。
例えば、食事を作って母屋へ運んでいた、孫の入学祝い等を負担していた、中元・歳暮のお裾分けがあった、などの事情です。
また、固定資産税や敷地管理費用の負担なども主張の柱になりやすいところです。
しかし、この裁決は、そうした「家族としての関わり」と、「生活費の主要部分の共有」を切り分けて判断しています。
結局のところ、鍵になるのは、家計がどの程度一体か、です。
誰の口座から何が落ちているか、メーターは分かれているか、清算していないと言えるか、など、証拠で追える形になっているかが重要になります。
収入状況と「固定費・食費・光熱費」の見え方で否定される
審判所はまず、被相続人と請求人ら双方に一定額以上の収入がある点を重視し、「扶養しなければ成り立たないような経済状況ではない」と整理しました。
その上で、居住費(固定資産税など)については、母屋も離れも相続開始日までは共有だったため、請求人らが固定資産税を負担していたとしても「当然のこと」と評価し、それだけで居住費を共通にしていたとは言えない、としています。
食費についても、宅配会社への支払いがあったとしても、それが誰の分の食材で、どの範囲を賄っていたのかが明らかでない以上、「主要部分を共通にしていた」とまで認める証拠にはならない、という流れです。
さらに、水道・電気・ガスが家屋ごとにメーター分離され、それぞれが負担していたという認定がある場合、光熱費を共通にしていたとは推認しにくくなります。
そして決定打として、「孫の祝い」「日常的な世話」「お裾分け」といった事情は、それ自体は美談でも、生計が一であること(生活費の主要部分の共通)とは別問題だ、と明確に線を引きました。
また、居住費について、上記ロ(イ)のとおり、本件母屋及び本件離れのいずれについても本件相続開始日までは本件被相続人と請求人■■との共有であったことからすれば、それらの固定資産税を請求人■■が支払っていたとしてもそれは当然のことといえ、そのことのみをもって請求人■■が本件被相続人と居住費を共通にしていたとの判断はできない。
しかしながら、食費を共通にしていたと認めるに足る証拠がないことは上記(ロ)のとおりであるところ、仮に、請求人■■が主張するとおり、請求人■が、本件被相続人及び請求人■■の2人分の食事を本件離れで調理し、本件母屋に2人分の食事を運んでいたとすると、この事実から養子である請求人■が養父母の食事の世話をしていたということは推認されるといえるが、これをもって生計を一にしていたとまでいうことはできず、上記(ロ)の判断を左右するものではない。また、孫の入学祝いや孫の日常的な世話をすること、中元等の「お裾分け」は、生計が一であることとは関係のない事情である。
最終的に、「居住費・食費・光熱費その他の主要部分を共通にしていた」とは認められず、小規模宅地等の特例は適用不可、という結論になりました。
想う相続税理士

