相続税専門税理士の富山です。
今回は、鉄道の騒音がある線路近くの土地が「利用価値が著しく低下している宅地」として相続税評価を減額できるかが争われた裁決事例について、お話します。
出典:TAINS(F0-3-790)(一部抜粋加工)
令03-05-26裁決
線路沿いはウルサイのに評価が下がらないのはナゼ?
相続財産に土地があると、「線路が近いからうるさい」「住みにくいから安く評価できるのでは」と感じる方は少なくありません。
今回の裁決は、まさにその発想からスタートしています。
相続人側は、鉄道路線の近隣にある複数の土地について、騒音の影響で利用価値が落ちているとして、国税庁タックスアンサーNo.4617(利用価値が著しく低下している宅地の評価)の取扱いで、評価額を減らせるはずだと主張しました。
No.4617は、騒音や日照阻害などで「取引金額に影響が出る」と認められる宅地について、一定の計算で減額評価できる可能性がある、という整理です。
つまり、相続人側は「鉄道騒音で価値が落ちているのだから、通達評価からさらに減らせるはずだ」と考えわけです。
想う相続税理士秘書
ただし、路線価、固定資産税評価額または評価倍率が、利用価値の著しく低下している状況を考慮して付されている場合にはしんしゃくしません。
争点は「路線価に騒音が織り込まれているか」
この事件の中心は、次の一点に集約されます。
鉄道騒音というマイナス要因が、すでに路線価に反映されているのか。
それとも、路線価には反映されていないから、No.4617で別途減額できるのか。
審判所は、まず「路線価とは何か」から整理しています。
路線価は、売買実例価額や公示価格、不動産鑑定士等の鑑定評価額、精通者意見価格などを基に評定されるものであり、路線に接する宅地に共通する事情が価額に影響する場合、その事情は通常、精通者意見価格等に反映され、その結果として路線価にも考慮されるのが通常だ、と述べています。
そして、路線価方式で評価するときは、奥行価格補正などの画地調整を行えば足り、特段の事情がない限り、路線に接する宅地に共通する騒音等を個別にしんしゃく(考慮)する必要はない、という方向性を示しました。
要するに、「線路沿い一帯に共通する騒音は、路線価の段階で織り込まれているのが原則」という考え方です。
追加の10%減は認められず
では、この事件では、実際に路線価へ騒音が織り込まれていたのでしょうか。
審判所は、路線価算定の基礎となった標準地に関する不動産鑑定士の評価過程を調査し、周辺環境の格差として鉄道騒音を考慮して精通者意見価格等を算定していたことを認定しました。
その上で、標準地の精通者意見価格等を基に評定された本件の路線価にも、鉄道騒音の影響が考慮されているといえる、と判断しています。
さらに、仮に「騒音がある」という事実があっても、それだけでは足りません。
審判所は、提出された証拠資料を精査しても、鉄道騒音によって、付近の他の宅地と比べてもなお利用価値が著しく低下し、取引金額に影響を及ぼしているといえる事情までは認められない、と述べました。
結論として、本件各土地をNo.4617の取扱いで減額して評価すべきとは認められず、評価通達どおりの評価額を「時価」とみて違法はない、したがって更正処分は適法で審査請求は棄却、となりました。
想う相続税理士

