【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

特別受益があり遺産分けが決まっていない場合の債務控除の注意点

相続税専門税理士の富山です。

今回は、特別受益があり、かつ、遺産分けが決まっていない場合(正確には、債務の負担者が決まっていない場合)の、相続税申告における債務控除について、お話します。


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遺産分けが決まらない場合の債務控除は?

相続税は、亡くなった方の財産を引き継いだ場合に課税されます。

その計算では、一定の借入金や未払金、葬式費用などを差し引くことができます。

これが「債務控除」です。

相続税の計算では、原則として「その債務を実際に負担する方」の財産から債務控除する、という考え方になります。

ところが、相続税の申告期限は原則10ヶ月です。

現実には、申告期限までに遺産分けがまとまらないことも珍しくありません。

この場合に問題となるのが、「申告上の債務の負担者をどう決めるのか?」という点です。

原則は法定相続分等で按分する

相続税法基本通達(一部抜粋)
13-3 「その者の負担に属する部分の金額」の意義
法第13条第1項に規定する「その者の負担に属する部分の金額」とは、相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。)によって財産を取得した者が実際に負担する金額をいうのであるが、この場合において、これらの者の実際に負担する金額が確定していないときは民法第900条から第902条までの規定による相続分又は包括遺贈の割合に応じて負担する金額をいうものとして取り扱う

民法(一部抜粋)
(法定相続分)
第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
(代襲相続人の相続分)
第九百一条 第八百八十七条第二項又は第三項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。
2 前項の規定は、第八百八十九条第二項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。
(遺言による相続分の指定)
第九百二条 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。
2 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。

「一定の借入金や未払金、葬式費用など」を誰が負担するか協議しても決まらない一方で、相続税申告をしなければならない、という場合には、法定相続分等の割合で負担するものとして相続税を計算することになります。

債務控除後にマイナスが出る場合にはどうする?

特別受益がある場合、「法定相続分等の割合で負担するものとして相続税を計算」すると、債務控除後の課税価格がマイナスになってしまうことがあります。

例えば、次のようなケースです。

相続人3人(配偶者A・長女B・二女C)
遺産 1億6,000万円
特別受益 4,000万円(長女Bに対する生前贈与)
借入金 1億円

まず、特別受益を考慮した遺産の計算をすると、次のようになります。

遺産(特別受益を考慮)
A (1億6,000万円+4,000万円)×1/2=1億円
B (1億6,000万円+4,000万円)×1/4△4,000万円=1,000万円
C (1億6,000万円+4,000万円)×1/4=5,000万円

一方で、借入金を法定相続分で按分すると、次のようになります。

借入金(法定相続分で按分)
A 1億円×1/2=5,000万円
B 1億円×1/4=2,500万円
C 1億円×1/4=2,500万円

この結果、課税価格は次のようになります。

課税価格
A 1億円△5,000万円=5,000万円
B 1,000万円△2,500万円=△1,500万円
C 5,000万円△2,500万円=2,500万円

このまま申告すると、Bの△1,500万円は0円として取り扱われるため、課税価格の合計は、
5,000万円+0円+2,500万円=7,500万円
となります。

しかし、遺産全体で見れば、
遺産1億6,000万円△借入金1億円=6,000万円
が実質的な課税対象です。

このズレを調整するため、次の取扱いがあります。

ただし、共同相続人又は包括受遺者が当該相続分又は包括遺贈の割合に応じて負担することとした場合の金額が相続又は遺贈により取得した財産の価額を超えることとなる場合において、その超える部分の金額を他の共同相続人又は包括受遺者の相続税の課税価格の計算上控除することとして申告があったときは、これを認める。

上記のような場合には、Bに発生する「△1,500万円」に対応する借入金を、A・C側に付け替えて債務控除をすることができます。

例えば、AとCで1/2ずつ(750万円ずつ)負担するとした場合、次のようになります。

借入金(調整後)
A 5,000万円+750万円=5,750万円
B 2,500万円△1,500万円=1,000万円
C 2,500万円+750万円=3,250万円
課税価格(調整後)
A 1億円△5,750万円=4,250万円
B 1,000万円△1,000万円=0円
C 5,000万円△3,250万円=1,750万円

これなら、
4,250万円+0円+1,750万円=6,000万円
となり、
遺産1億6,000万円△借入金1億円=6,000万円
と整合する形で相続税を計算できます。

想う相続税理士

未分割の申告に限らず、通常の遺産分割でも、特定の相続人の課税価格がマイナスになるような分け方をしてしまうと、債務控除を使い切れず、全体の相続税が増える場合がありますので、ご注意を。