【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

一般廃棄物最終処分場跡地の相続税評価額はどうなる?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、一般廃棄物の最終処分場跡地の相続税評価が争点となった裁決事例について、お話します。

出典:TAINS(F0-3-210(一部抜粋加工)
平19-05-23裁決


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ごみ処分場だった土地を相続したら評価はどうなる?

一般廃棄物の最終処分場として使われていた土地は、見た目が空き地になっていても、地中にはごみや焼却灰が埋まっていることも少なくありません。

そのような土地を相続した場合、多くの方は「危なそうだし、価値はほとんどないのでは?」と感じられると思います。

相続税評価についても、「ごみが埋まっているのだから、評価額も大きく下げてもらえるはずだ」とお考えになるかもしれません。

今回ご紹介する裁決事例でも、一般廃棄物最終処分場の跡地にある土地(乙土地)の評価をどう考えるかが大きな争点になりました。

ポイントは、その土地が「ごみ処分場の跡地である」というマイナス面だけを見て評価するのか、それとも「実際にいくらで売れる状況にあるのか」という取引の現実を踏まえて評価するのか、という点です。

この裁決では、市がその土地についてどのような対応方針(買取基準)を定めていたかが、評価額を左右する決定的な要素になりました。

市の「最終処分場跡地用地取得基準」があった

まず、この土地がどのように利用されてきたかを簡単に押さえます。

A市は、もともと地権者から土地を使用貸借で借りて、一般廃棄物の最終処分場として利用していました。

その後、一般廃棄物の埋立事業が終了します。

埋立が終わったとはいえ、地中にはごみが埋まっていますので、通常の宅地とは違う不安を感じる方も多いでしょう。

そこで問題になるのが、地権者が「この土地を市に買い取って欲しい」と言ってきた場合に、いくらで買い取るのかという点です。

この裁決で取り上げられた事例では、A市は「最終処分場跡地用地取得基準」というルールを作っていました。

その内容は、次のとおりです。

3 A市は、本件処分場跡地を地権者から使用貸借により借り受け、一般廃棄物最終処理場として利用してきたが、一般廃棄物の埋立事業終了後、地権者からの買取請求があった場合の本件処分場跡地取得基準を定めている。そして、A市の取得に係る買取価格は、地権者に経済的不利益が生ずることを回避するため、一般廃棄物が埋められていることは考慮されておらず、通常の土地の取引価額により買い取ることになっている。

ここが非常に重要なポイントです。

市は、「ごみが埋まっていることによって地権者(相続人を含む)が損をしないように、買い取るときの価格は『通常の土地の取引価額』で考えます」というルールを明確に決めていた訳です。

つまり、地権者が市に対して買取を求めれば、埋立ごみの存在を理由に値引きされるのではなく、「普通の土地」と同じ水準の価格で買ってもらえる状況にあった、ということになります。

この「市が通常の土地の価額で買い取ると約束していた」という事実が、相続税評価でも決定的な意味を持ちました。

裁決が示した「通常の土地として評価する」という結論と実務への示唆

では、相続税の裁決は、この処分場跡地をどのように評価したのでしょうか。

裁決では、市の取得基準が定められていたことを前提に、次のように評価しています。

本件処分場跡地取得基準が定められたことからは、請求人らが相続開始日以後本件乙土地の買取請求をしたとすると、これに対していつでも応じ、その買取価格は、一般廃棄物が埋められていることを考慮しない通常の土地としての取引価額となる状況にあったことが推認される。したがって、本件相続開始日における本件乙土地は、一般廃棄物が埋められていないのと同様の通常の価額を維持しているものと認められるから、本件乙土地に一般廃棄物が埋められていることを斟酌しないで評価するのが相当である。

つまり、
「相続が始まった後に、市に買取を求めれば、いつでも通常の土地の価額で買ってもらえる状態にあった」
と判断した上で、
「だから、相続税評価でも、ごみが埋まっていることを理由に評価額を下げる必要はない」
と結論付けた、ということになります。

相続税評価では、「時価」=「通常の取引価額」を基準に考えます。

この裁決は、その「通常の取引価額」を考えるにあたって、単に土地の状態だけを見るのではなく、「実際に、誰が、どのような条件で買ってくれる状況にあるのか」という現実の取引可能性が非常に重視される、ということを示しています。

ごみ処分場の跡地であっても、自治体が「通常の土地と同じ価額で買い取ります」と明確に約束しているのであれば、相続税評価でも、その約束を踏まえた評価(=減額しない評価)になる場合がある、ということです。

逆に言えば、同じように「ごみ処分場跡地」「埋立地」であっても、

買取を約束してくれる主体がいるのかどうか
その買取価格がどの程度の水準なのか
その約束が、いつでも行使できる現実的なものなのか
といった具体的な事情によって、相続税評価は大きく変わる可能性があります。

想う相続税理士

(https://www.hiromichi-tax.com/wp-content/uploads/2018/01/軽税右向き.png)"]同様のケースの場合には、自治体等との間に、今回の裁決のような買取基準や合意がないかどうか、事前に確認しておくことが大切です。