相続税専門税理士の富山です。
今回は、名義が相続人であっても、実際の管理や取得の流れから、結局は被相続人(亡くなった方)の財産と判断された裁決事例について、お話します。
出典:TAINS(F0-3-310)(一部抜粋加工)
平19-03-08裁決
名義が家族でも安心できるとは限らない

ホームズ、家族名義の預金や債券なら、その家族の財産として扱われることが多いんじゃないのかい。
ワトスン君、そこが相続税の申告では実にやっかいなんだ。
名義が誰になっているかはもちろん大事だけれど、それだけで決まるわけではない。
その財産が誰の出したお金で作られたのか、誰が保管していたのか、誰の判断で動かしていたのか、そうした実態が見られるんだよ。
名義が誰になっているかはもちろん大事だけれど、それだけで決まるわけではない。
その財産が誰の出したお金で作られたのか、誰が保管していたのか、誰の判断で動かしていたのか、そうした実態が見られるんだよ。


では、名義が子であっても、父親の財産とされることがあるのかい。
十分にあるよ。
この事案でも、請求人は、被相続人と共同で仕事(公認会計士業)をしていたことなどを理由に、割引金融債券や相続人名義の預金は親子の共有財産であり、半分だけが相続財産だと主張した。
しかし、その主張は認められなかったんだ。
この事案でも、請求人は、被相続人と共同で仕事(公認会計士業)をしていたことなどを理由に、割引金融債券や相続人名義の預金は親子の共有財産であり、半分だけが相続財産だと主張した。
しかし、その主張は認められなかったんだ。


親子で一緒に働いていたという事情があっても、それだけでは足りないわけだね。
そのとおりだよ。
相続では、家族の間で何となく共有していたという感覚よりも、客観的に見て誰の財産といえるかが重視されるんだ。
相続では、家族の間で何となく共有していたという感覚よりも、客観的に見て誰の財産といえるかが重視されるんだ。

被相続人以外の者の名義の財産の帰属の判断に当たっては、単に権利者の表示の形式のみにより判断するのではなく、その財産の取得原資、管理及び運用の状況並びに権利変動の原因となる事実の有無等の客観的事実を総合的に勘案して判断すべきものである。
なぜ全部が被相続人の財産と判断されたのか?

ホームズ、では、どんな事情があると、全部が被相続人の財産だと判断されやすいんだい。
この件では、いくつもの事情が積み重なっていたんだ。
まず、割引金融債券の取得のもとになった資金は、被相続人が各金融機関に払い込んだものと認定されている。
さらに、取引は被相続人自身や、その指示を受けた者が行い、債券も長く被相続人の自宅で保管されていた。
まず、割引金融債券の取得のもとになった資金は、被相続人が各金融機関に払い込んだものと認定されている。
さらに、取引は被相続人自身や、その指示を受けた者が行い、債券も長く被相続人の自宅で保管されていた。


なるほど。
では、途中で子の貸金庫に移された点は、子の財産であることの根拠にはならなかったのかい。
では、途中で子の貸金庫に移された点は、子の財産であることの根拠にはならなかったのかい。
そこも決め手にはならなかった。
貸金庫に保管するようになった後も、被相続人の指示を受けた者の依頼に応じて取り出していたと見られている。
つまり、保管場所だけが変わっても、実際の支配や管理の流れは大きく変わっていないと受け止められたわけだね。
貸金庫に保管するようになった後も、被相続人の指示を受けた者の依頼に応じて取り出していたと見られている。
つまり、保管場所だけが変わっても、実際の支配や管理の流れは大きく変わっていないと受け止められたわけだね。


相続人名義の預金についてはどうなんだい。
名義が相続人なら、少なくとも預金はその人のものと言えそうだけれど。
名義が相続人なら、少なくとも預金はその人のものと言えそうだけれど。
そこも同じ発想なんだ。
その預金の原資が、被相続人により管理運用されていた割引金融債券の償還金だと認定されれば、名義だけで相続人固有の財産とは言いにくい。
この事案では、預金も含めて、被相続人の意思で預けられたものと見られているんだよ。
その預金の原資が、被相続人により管理運用されていた割引金融債券の償還金だと認定されれば、名義だけで相続人固有の財産とは言いにくい。
この事案では、預金も含めて、被相続人の意思で預けられたものと見られているんだよ。

「名義」と「実際の持ち主」のズレに注意

ホームズ、これは一般の家庭の相続でも起こり得る話なのかい。
もちろんだよ。
むしろ、公認会計士業のような特殊な事情がなくても、親が子名義の口座を使っていたとか、家族名義で金融商品を保管していたとか、似た構図は珍しくない。
だから、名義だけで安心しないことが大切なんだ。
むしろ、公認会計士業のような特殊な事情がなくても、親が子名義の口座を使っていたとか、家族名義で金融商品を保管していたとか、似た構図は珍しくない。
だから、名義だけで安心しないことが大切なんだ。


では、申告の場面では何を確認すればいいんだろう。
まずは、取得資金の流れを確認することだね。
次に、通帳や証券、貸金庫の管理を誰がしていたかを見ていく。
さらに、誰がその財産の存在や残高を把握し、誰の判断で入出金や売買がされていたのかも重要だ。
家族の説明が後から変わると不自然に見えやすいから、申告前に事実関係を丁寧に整理しておく必要があるんだ。
次に、通帳や証券、貸金庫の管理を誰がしていたかを見ていく。
さらに、誰がその財産の存在や残高を把握し、誰の判断で入出金や売買がされていたのかも重要だ。
家族の説明が後から変わると不自然に見えやすいから、申告前に事実関係を丁寧に整理しておく必要があるんだ。


親子で協力して財産を作ってきたつもりでも、証拠がなければ共有とは認められにくいわけだね。
そのとおりだよ。
相続税の申告では、気持ちの上での共有ではなく、客観的な資料に裏付けられた共有であることが求められる。
とりわけ、名義預金や名義株、家族名義の金融商品がある場合には、後で大きな争いにならないよう、早めに専門家と整理しておくべきなんだ。
相続税の申告では、気持ちの上での共有ではなく、客観的な資料に裏付けられた共有であることが求められる。
とりわけ、名義預金や名義株、家族名義の金融商品がある場合には、後で大きな争いにならないよう、早めに専門家と整理しておくべきなんだ。

想う相続税理士
相続では、名義が誰かという見た目だけで判断すると、思わぬ申告もれや争いにつながることがあります。
特に、家族名義の預金や金融商品がある場合には、取得資金、管理状況、運用実態まで確認した上で、誰の財産と見るべきかを慎重に見極めることが大切です。
