【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

駆け込み相続税対策を阻止する「3年以内新貸付事業」除外規定の適用対象外パターン

相続税専門税理士の富山です。

今回は、小規模宅地等の特例において適用対象から除外される「相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等」について、お話します。


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相続税の申告における小規模宅地等の特例とは?

相続税の計算においては、一定の居住用または事業用の宅地等について、その評価額を80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があり、大きくは「(1)特定事業用宅地等」「(2)特定同族会社事業用宅地等」「(3)特定居住用宅地等」「(4)貸付事業用宅地等」の4つの適用パターンがあります。

相続の発生が予見された時に、「(4)貸付事業用宅地等」に該当する土地になるよう、慌てて賃貸物件を建築しても、認められない場合があります。

貸付事業用宅地等については、

租税特別措置法(一部抜粋加工)
第69条の4 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
四 貸付事業用宅地等
相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等(相続開始の日まで3年を超えて引き続き政令で定める貸付事業を行つていた被相続人等の当該貸付事業の用に供されたものを除く。)を除き

という規定があるからです。

「新たに貸付事業の用に供された」とはどういうこと?

租税特別措置法関係通達(一部抜粋加工)
69の4-24の3 新たに貸付事業の用に供されたか否かの判定
「新たに貸付事業の用に供された」とは、貸付事業の用以外の用に供されていた宅地等が貸付事業の用に供された場合又は宅地等若しくはその上にある建物等につき「何らの利用がされていない場合」の当該宅地等が貸付事業の用に供された場合をいうことに留意する

「新たに貸付事業の用に供された」とは、ザックリ言うと、土地を貸付事業に転用したり、未利用地を活用して新たに貸付事業を始めた場合が該当します。

ですから、

賃貸借契約等につき更新がされた場合は、新たに貸付事業の用に供された場合に該当しない

ということになります。

また、
実際には貸していなくても貸付事業用地として認められるのはどのレベルまで? に似た話になりますが(こちらは相続開始時点の話)、途中で賃貸状態が一時的に途切れただけ、という場合には、再開した時に「未利用地を活用して新たに貸付事業を始めた(新たに貸付事業の用に供された)」には該当しない、とされています。

次に掲げる場合のように、貸付事業に係る建物等が一時的に賃貸されていなかったと認められるときには、当該建物等に係る宅地等は、上記の「何らの利用がされていない場合」に該当しないことに留意する。
(1) 継続的に賃貸されていた建物等につき賃借人が退去をした場合において、その退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、賃貸されていたとき(新たな賃借人が入居するまでの間、当該建物等を貸付事業の用以外の用に供していないときに限る。)
(2) 継続的に賃貸されていた建物等につき建替えが行われた場合において、建物等の建替え後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、賃貸されていたとき(当該建替え後の建物等を貸付事業の用以外の用に供していないときに限る。)
(3) 継続的に賃貸されていた建物等が災害により損害を受けたため、当該建物等に係る貸付事業を休業した場合において、当該貸付事業の再開のための当該建物等の修繕その他の準備が行われ、当該貸付事業が再開されていたとき(休業中に当該建物等を貸付事業の用以外の用に供していないときに限る。)

3年以内に相続で取得した場合にはどうなる?

租税特別措置法施行令(一部抜粋)
第40条の2 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例

9 被相続人が相続開始前3年以内に開始した相続又はその相続に係る遺贈により法第69条の4第3項第1号に規定する事業の用に供されていた宅地等を取得し、かつ、その取得の日以後当該宅地等を引き続き同号に規定する事業の用に供していた場合における当該宅地等は、同号の新たに事業の用に供された宅地等に該当しないものとする。

20 第9項の規定は、被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地等について準用する。この場合において、同項中「第69条の4第3項第1号」とあるのは、「第69条の4第3項第4号」と読み替えるものとする。

今回、亡くなったAさんの相続財産について、相続税の申告をするとします。

このAさんが、亡くなる前3年以内に、Bさんから「(租税特別措置)法第69条の4第3項第4号に規定する事業の用に供されていた宅地等を取得」を取得した場合には、その後Aさんが、その貸付事業を継続しているのであれば、Aさんにとっての貸付事業は相続開始前3年以内に新たに開始されていますが、その宅地等は「相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等」には該当しない、ということになります。

上記のAさんの相続税申告の際には、Bさんの相続(相続税申告)において、その宅地等が「(租税特別措置)法第69条の4第3項第4号に規定する事業の用に供されていた宅地等」に該当するかどうかを、きちんと確認しましょう。

想う相続税理士秘書

特定貸付事業が継続していた場合にも除外規定の適用対象外

また、最初の措置法の条文をご覧いただくとお分かりのとおり、「相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等」であったとしても、「(相続開始の日まで3年を超えて引き続き政令で定める貸付事業(「特定貸付事業」と言います)を行つていた被相続人等の当該貸付事業の用に供されたものを除く。)を除き」とあるように、特定貸付事業が3年超継続していた場合には、「相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等」には該当しません。

想う相続税理士

「特定貸付事業」は、租税特別措置法施行令第40条の2(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例)に規定されています。