【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

死亡保険金を受け取った際に相殺される契約者貸付金は債務控除の対象?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、死亡保険金と「契約者貸付金」が絡む場面で起こりやすい、債務控除の勘違いについてお話します。

死亡保険金を受け取った場合に、契約者貸付金を「債務控除で引ける」と考えてしまうケースがあるのですが、ここは整理の仕方が少し独特です。

先に結論に近い要点だけ言うと、死亡保険金は「契約者貸付金等を控除した後の金額」を受け取ったものとして取り扱います。

その上で、控除された分の保険金も、控除された分の債務も、「いずれもなかったもの」として整理します。

この整理を忘れると、特に「相続放棄」が絡む場合に、申告の筋が通らなくなります。


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相続税の申告における「債務控除」とは?

相続税は、亡くなった方から財産を引き継いだ場合に、取得した財産の価額をベースに計算します。

ただし、亡くなった方に借入金などの債務があった場合や、葬式費用を負担した場合は、一定の範囲で差し引けます。

これが「債務控除」です。

債務控除の対象になるのは、原則として「相続や遺贈により財産を取得した『相続人』の方が負担することになる債務や葬式費用」です。

契約者貸付金は「債務控除」として取り扱わない

生命保険には「契約者貸付」という仕組みがあります。

解約返戻金の範囲内で、保険会社からお金を借りるようなイメージです。

ここで重要なのは、契約者貸付金が残ったまま被保険者(亡くなった方)が死亡すると、死亡保険金から契約者貸付金が差し引かれて、差引後の金額が受取人に支払われる点です。

例えば、死亡保険金が1,000万円で、契約者貸付金が200万円残っている場合、受取人に支払われるのは、1,000万円ではなく、差引後の800万円になります。

この場面で、よくある誤解が次の発想です。

「死亡保険金は満額1,000万円で財産計上する。そして、契約者貸付金200万円は亡くなった方の債務だから、債務控除の対象となる。」

しかし、死亡保険金を受け取る側の計算で、契約者貸付金を別途債務として差し引くような取扱いはしません。

相続税法基本通達(一部抜粋加工)
3-9 契約者貸付金等がある場合の保険金
保険契約に基づき保険金が支払われる場合において、当該保険契約の契約者(共済契約者を含む。以下「保険契約者」という。)に対する貸付金若しくは保険料(共済掛金を含む。以下同じ。)の振替貸付けに係る貸付金又は未払込保険料の額(いずれもその元利合計金額とし、以下3-9及び5-7においてこれらの合計金額を「契約者貸付金等の額」という。)があるため、当該保険金の額から当該契約者貸付金等の額が控除されるときの法第3条第1項第1号の規定の適用については、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次による。
(1) 被相続人が保険契約者である場合 保険金受取人は、当該契約者貸付金等の額を控除した金額に相当する保険金を取得したものとし、当該控除に係る契約者貸付金等の額に相当する保険金及び当該控除に係る契約者貸付金等の額に相当する債務はいずれもなかったものとする。

つまり、先ほどの例で言えば、受取人は800万円の保険金を取得したものとして申告します。

そして、差し引かれた(相殺された)200万円については、「保険金もなかった」「債務もなかった」として、そもそも申告計算の土俵に乗せない整理になります。

「差し引くなら同じ」と考えると失敗する場合がある

ここで、よくある反応があります。

「保険金の中で差し引いても、債務控除で差し引いても、結局、最終的に課税される金額は同じでは?」

たしかに、受取人が相続人で、かつ他に特段の事情がなければ、最終的な課税価格が同じように見えることもあります。

ただし、この考え方のまま進めると、相続放棄が絡んだ瞬間に破綻します。

相続放棄をした方でも、死亡保険金の受取人になっていれば、保険金を受け取ること自体はあり得ます。

その上で、死亡保険金は、民法上の相続財産そのものではない一方で、相続税では「みなし相続財産」として課税対象になります。

一方、相続放棄をした方は、「最初から相続人ではない方」として取り扱われます。

そのため、債務控除は適用できません。

相続税法(一部抜粋加工)
第13条 債務控除
相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。以下この条において同じ。)により財産を取得した者が(以下省略)

相続放棄した人が死亡保険金(例:800万円)を受け取ったケースを、上記の

「死亡保険金は満額1,000万円で財産計上する。そして、契約者貸付金200万円は亡くなった方の債務だから、債務控除の対象となる。」

と整理してしまうと、相続放棄した人は債務控除ができませんから、結果として「1,000万円が課税対象」という間違った結論になりかねないのです。

想う相続税理士

相続放棄をしていても死亡保険金を受け取っていたりすると、相続税の課税対象となります。

「相続放棄したら相続税はかからない」なんてことはありません。

きちんと申告しないと、他の人の相続税について修正申告をすることになる場合がありますので、ご注意を。