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小規模宅地等の特例における適用面積計算ミスは更正の請求が可能?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、小規模宅地等の特例(特定事業用宅地等)の選択面積の計算誤りを理由に更正の請求ができるか、について争われた判決事例について、お話します。

出典:TAINS(Z888-2767)(一部抜粋加工)
令和7年4月16日判決


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小規模宅地等の特例の適用面積計算ミスが発生

小規模宅地等の特例は、一定の宅地について相続税評価額を大きく減額できる制度です。

ただし「どの部分を、どの区分で、どれだけの面積で選択するか」が実務上の肝になります。

この判決は、当初の申告(及び修正申告)での選択内容について、後から「面積の計算が違っていた」として更正の請求をしたところ、認められなかった事案です。

登場する土地は、2筆からなる宅地で、自宅、納屋、倉庫、さらに親族の自宅の敷地として利用されていました。

申告では、納屋の敷地の用に供されている部分を「特定事業用宅地等」とし、それ以外を「特定居住用宅地等」として、小規模宅地等の特例の計算をしています。

その後、相続人側は「倉庫の敷地の用に供されている部分も、特定事業用宅地等に入れるべきだった」として、更正の請求をしました。

さらに控訴審では「納屋敷地部分の面積計算にも誤りがあった」として、予備的に主張を追加しています。

結論として、東京高裁は控訴を棄却し、追加した予備的請求も棄却しました。

争点は「更正の請求で直せる誤り」なのかどうか

相続人側の主張を、一般の方向けに要約するとこうです。

小規模宅地等の特例を拡大適用したい訳ではない
土地の利用区分(評価単位)や面積の計算を事実誤認していた結果、計算が間違っただけである
だから国税通則法第23条第1項第1号の「計算に誤りがあった」に該当し、更正の請求で直せるはずである

また、納屋敷地部分の面積については、地価税法取扱通達6-3(2)の按分方法で計算すると、納屋敷地部分は154.56㎡になる、という主張もされています。

一方で国側は、次のように反論します。

小規模宅地等の特例は、当初申告(または修正申告)で「選択した範囲」で適用される制度であり、更正の請求で事後的に適用範囲を広げることはできない、という立場です。

そして、面積の計算方法についても、「その方法が唯一の正解ではない」と主張します。

ここで重要なのは、単なる「四則演算の写し間違い」のような誤りと、制度の前提となる「選択」「区分」のやり直しに近い主張とが、実務上は別物として扱われやすい点です。

この事件では裁判所も、後者に近いと捉えました。

裁判所は、評価単位(1画地)の判定について、財産評価基本通達7-2(1)の枠組みに照らし、当初申告から更正の請求まで一貫して「宅地全体を1画地」として評価していることなどを踏まえ、評価単位の誤りとはいえない、と判断しています。

また、「倉庫敷地部分を特定事業用宅地等として選択していた」とも認められないため、そこを更正の請求で追加することは、結果として特例の適用範囲を広げることになってしまう、と整理されています。

面積等の計算には幅がある!

この判決の実務的な示唆は、大きく3つです。

1つ目は、「小規模宅地等の特例は『当初申告時の選択』が極めて重い」という点です。

申告書の明細書等に、どの区分でどの面積を選択したかが表れます。

後から「本当は別の部分も事業用だった」と言っても、申告書上そう選択していなければ、争い方としては「範囲の拡大」と評価されやすくなります。

2つ目は、「面積計算の根拠を申告時点で説明できる状態にしておく」ことです。

この事件では、75.00㎡という面積について、関与税理士が現地確認を行い、課税明細書や登記事項証明書等も踏まえて算定した事情が認定されています。

具体的には、納屋の敷地部分46.48㎡と自家用車用車庫の敷地部分28.52㎡を合算して75.00㎡とした、という流れです。

3つ目は、「通達等の『計算方法』は唯一解とは限らない」ことです。

裁判所は、地価税法取扱通達の方法が唯一の計算方法ではない、という方向で判断しており、そのことだけで直ちに計算誤りとはいえない、と述べています。

本件特例における選択特例対象宅地等の面積を算定するための計算に当たっては地価税法取扱通達による方法が唯一の計算方法というものではないから、上記の算定が地価税法取扱通達の定めるところに従った計算方法によるものではなかったとしても、そのことをもって直ちに上記の算定につき誤りがあったとみるべき法的根拠はうかがわれず、控訴人が主張するところを踏まえても、当該75.00㎡が計算誤りによるものであったとみることはできない。

少し難しく見えるかもしれませんが、要するに「計算方法の好みの違い」だけでは、更正の請求が通るほどの「誤り」とは扱われにくい、ということです。

想う相続税理士

小規模宅地等の特例を適用する場合には、慎重に検討しましょう。