相続税専門税理士の富山です。
今回は、駐留軍用地(軍用地)について、小規模宅地等の特例が使えるかどうかが争われた裁決事例について、お話します。
出典:TAINS(F0-3-937)(一部抜粋加工)
令07-12-08裁決
軍用地でも建物や構築物の「敷地」である必要がある?
今回の裁決は、相続税申告をしたあとに遺産分割が成立し、相続人が「この土地に小規模宅地等の特例を適用して税額を下げたい」として更正の請求をしたところ、税務署側が「その特例は使えない」として一部しか認めなかった、という流れです。
争いの中心は、貸付事業用宅地等としての小規模宅地等の特例を使う前提として、土地が「建物又は構築物の敷地の用に供されているもの」に当たるか、という点でした。
ここで注意したいのは、裁決が「事業として貸している(=貸付事業)」だけで自動的に特例が使える、とは整理していない点です。
特例の要件には段階があり、ざっくり言うと「貸付事業に使っていた」だけでなく、さらに「建物又は構築物の敷地として使われている」部分に限って対象になる、という考え方が前提になっています。
駐留軍用地は、所有者が自由に出入りできず、どこに何があるか把握しづらかったりするため、感覚的には「基地全体で一体利用では?」と思いやすいです。
ただ、この裁決では、その感覚だけでは足りず、結局「建物又は構築物の敷地としての利用」まで認められないと、特例は通らない、という方向で判断されています。
事業供用要件と敷地供用要件は「別物」
裁決は、措置法69条の4の要件を、「事業供用要件」と「敷地供用要件」に分けて整理しています。
ポイントは「事業供用要件を満たすだけでは足りない」という整理です。
裁決文(本文)では、要旨として次のような骨格が示されています。
特定の宅地等について本件特例の適用を受けるためには、当該宅地等が「被相続人等の事業の用に供されていた宅地等」という要件(事業供用要件)を充足するのみでは足りず、事業供用要件を充足する宅地等のうち、更に「建物又は構築物の敷地の用に供されているもの」という要件(敷地供用要件)を充足する部分のみが、本件特例の適用対象となると解される。
そして、「敷地」の捉え方についても、文言と趣旨から、基本的には「建物又は構築物が設けられている」と解するのが相当、という筋道を立てています。
さらに、具体的に敷地の範囲を決めるときは、建物や構築物を特定した上で、位置関係や利用状況などを総合して、社会通念で「一体として利用されているか」で見る、という判断枠組みです。
建物が見当たらず、周辺の施設とも距離があり、土地自体の利用が耕作や雑木のまま、という状況だと「どの建物の敷地なのか」を説明しづらくなります。
今回の裁決は、まさにその説明が難しい類型として整理されました。
平等論の落とし穴
この裁決は、特例の可否(敷地供用要件)だけでなく、手続面も争点になっています。
「他の申告では同じように特例を使っても指摘されなかったのに、本件だけ否認は不公平だ」という趣旨の主張に対し、裁決は「仮に他で見逃されていたとしても、法を正しく適用できなくなるわけではない」という整理で退けています。
実務的には、ここが落とし穴になりやすいです。
過去に通ってしまった事例があっても、それが「お墨付き」になるとは限らず、更正の請求の局面では、要件がより正面からチェックされることがあります。
特に軍用地のように、現地状況や建物・構築物との関係が把握しづらい土地は、「敷地の用に供されている」と言い切るための材料をどう揃えるかが難所になります。
想う相続税理士
