相続税専門税理士の富山です。
今回は、店舗併用住宅の持分を配偶者に生前贈与(「贈与税の配偶者控除」を利用)した後に、相続で小規模宅地等の特例を使う場合、居住用と事業用の割合をどう考えるかについて、お話します。
贈与税の申告と相続税の申告は整合性が取れていないとダメ?
店舗併用住宅(1階が店舗、2階が住居など)の土地は、相続税の小規模宅地等の特例を検討する場合に、「居住用の宅地」と「事業用の宅地」に分けて考える場面が出てきます。
ここで混乱しやすいのが、過去に配偶者へ持分贈与をして、贈与税申告の時に「住宅部分から優先して贈与したものとして計算した」というケースです。
この「住宅部分から先に贈与した扱い」は、あくまで贈与税の計算をするための整理にすぎません。
相続税で小規模宅地等の特例を検討するときは、原則として、「相続開始(亡くなった日)の直前の利用状況(現況)」を基準に、居住用・事業用の区分や割合を判定します。
つまり、贈与税の申告の時に「この部分を贈与したことにしよう」と整理していても、相続税の特例の判定では、その整理をそのまま使えるとは限らない、ということです。
残った持分は「相続開始直前の割合」で按分する
例えば、夫が店舗併用住宅の土地建物を共有で持っていて、数年前に妻へ持分の一部を贈与したとします。
この時、「贈与税の配偶者控除」を適用するために、「贈与した持分は住居部分に対応する部分である」として贈与税の申告をしたとします。
その後、夫が亡くなり、相続税の申告で小規模宅地等の特例を検討する局面になりました。
このとき重要なのは、夫が亡くなる直前、その建物(ひいては敷地)が「住居として何割」、「事業として何割」使われていたかです。
仮に、亡くなる直前の実態が「住居60%・店舗40%」だったとします。
そして、夫が亡くなった時点での夫の持分が「全体の4分の3」だったとします(過去の贈与で妻が4分の1を持っているイメージです)。
この場合、相続税の特例の検討では、夫の持分のうち住居に対応する割合は、「4分の3 × 60% = 45%」(全体に対する比率)という考え方になります。
同様に、夫の持分のうち事業に対応する割合は、「4分の3 × 40% = 30%」という整理になります。
ここでのポイントは、過去に「住宅部分から贈与した取扱い」をしていたとしても、相続税の場面では、「残った持分は残った持分として」、相続開始直前の実態割合で按分していくという発想になることです。
「思い込み」を排除して証拠を揃えておく
この論点での典型的な失敗は、「贈与税の申告で住宅部分から贈与した取扱いにしたのだから、相続税の申告では夫の残り持分は店舗部分だけだろう」と思い込んでしまうことです。
相続税の小規模宅地等の特例は、要件判断が細かく、しかも税額への影響が大きいので、割合の取り違いがそのまま税額差になります。
実務では、次の点を丁寧に押さえると安全です。
まず、相続開始直前の利用状況を説明できる資料を揃えることです。
店舗の営業実態が分かる資料や、住居としての使用状況(居住実態)が分かる資料を、後から説明できる形にしておきます。
次に、床面積や区画の割合で按分できる根拠を整理することです。
店舗併用住宅は「何となく半々」ではなく、図面や床面積、実際の区画を使って、合理的に説明できる按分にする必要があります。
想う相続税理士
