相続税専門税理士の富山です。
今回は、上場株式を相続した場合に、亡くなった日の最終価格がないケースの取扱いについて、お話します。
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亡くなった日の最終価格(株価)が無いなんてことがある?

上記の記事でもお話したとおり、相続で取得した上場株式は、4つの金額のうち、いずれか低い金額で評価します。
その1つが、「課税時期(亡くなった日)の最終価格(株価)」です。
ただし、亡くなった日が休業日(取引所がクローズ)だったりすると、最終価格が存在しない、というようなことが起こります。
そのような場合には、残りの3つの金額のうち、いずれか低い金額で評価するのでしょうか?
そんなことはありません。
財産評価基本通達に、次のように定められています。
財産評価基本通達(一部抜粋)
171 上場株式についての最終価格の特例-課税時期に最終価格がない場合
169《上場株式の評価》の定めにより上場株式の価額を評価する場合において、課税時期に最終価格がないものについては、前項の定めの適用があるものを除き、次に掲げる場合に応じ、それぞれ次に掲げる最終価格をもって課税時期の最終価格とする。
亡くなった日に最も近い日の株価を採用する
(1) (2)又は(3)に掲げる場合以外の場合 課税時期の前日以前の最終価格又は翌日以後の最終価格のうち、課税時期に最も近い日の最終価格(その最終価格が2ある場合には、その平均額)
日曜日にお亡くなりになり、土曜日・日曜日と株価が無く、過去にさかのぼると金曜日(2日前)の株価があるけれども、翌日(1日後)の月曜日の株価がある、という場合には、近い方の月曜日の株価を採用します。
月曜日が祝日で株価が無く、翌々日(2日後)の火曜日の株価がある、という場合には、金曜日の株価と火曜日の株価の平均を採用します。
想う相続税理士秘書
亡くなった日が権利落等の日の前日以前である場合
(2) 課税時期が権利落等の日の前日以前で、(1)の定めによる最終価格が、権利落等の日以後のもののみである場合又は権利落等の日の前日以前のものと権利落等の日以後のものとの2ある場合 課税時期の前日以前の最終価格のうち、課税時期に最も近い日の最終価格
基準日=権利確定日をまたぐと、「株価が下がる(人気が無くなる)」場合があります。
例えば、配当の基準日後に株式を購入しても、配当をもらえません。
配当をもらえない分、株価が下がるのです。
配当をもらう権利が切り離されてしまった(落ちてしまった)状態等のことを権利落等と言います。
亡くなった日時点の上場株式が権利落等でないのであれば、権利落等の下がった株価を採用するのはオカシイ、ということです。
亡くなった日が株式等の割当ての基準日の翌日以後である場合
(3) 課税時期が株式の割当て等の基準日の翌日以後で、(1)の定めによる最終価格が、その基準日に係る権利落等の日の前日以前のもののみである場合又は権利落等の日の前日以前のものと権利落等の日以後のものとの2ある場合 課税時期の翌日以後の最終価格のうち、課税時期に最も近い日の最終価格
基準日=権利確定日をまたぐと、「1株当たりの経済的中身が下がる」場合があります。
例えば、既存の株主に対し、お金の払込なしで新株を一定比率で配る「無償割当(ボーナス・イシュー)」が行われれば、1株当たりの価値が希薄化します(薄まります)。
亡くなった日時点の上場株式の価値が希薄化しているのであれば、希薄化前の濃い株価(高い株価)を採用するのはオカシイ、ということです。
想う相続税理士