相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税の申告における「配偶者の税額軽減」について、お話します。
配偶者は1億6,000万円まで相続税がかからない
国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋)
No.4158 配偶者の税額の軽減
概要
配偶者の税額の軽減とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。
(注) この制度の対象となる財産には、隠蔽または仮装されていた財産は含まれません。
(1) 1億6千万円
(2) 配偶者の法定相続分相当額
上記にあるとおり、相続により配偶者が取得した財産(正味財産ベース)については、(1)または(2)のどちらか多い金額までは相続税がかかりません。
ということは、最低でも1億6,000万円までは相続税がかかりません。
配偶者の税額軽減には申告要件がある
相続税法(一部抜粋)
第19条の2 配偶者に対する相続税額の軽減
3 第1項の規定は、第27条の規定による申告書又は国税通則法第23条第3項に規定する更正請求書に、第1項の規定の適用を受ける旨及び同項各号に掲げる金額の計算に関する明細の記載をした書類その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。
配偶者の税額軽減の適用は、一定の書類を添付して申告することが要件となっています。
ただし、「配偶者が取得した財産について配偶者の税額軽減の適用を受ける」ということは、その前提として、「配偶者が取得する財産が決まっている」必要があります。
この配偶者の税額軽減は、配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産を基に計算されることになっています。
したがって、相続税の申告期限までに分割されていない財産は税額軽減の対象になりません。
ただし、相続税の申告書または更正の請求書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付した上で、申告期限までに分割されなかった財産について申告期限から3年以内に分割したときは、税額軽減の対象になります。
なお、相続税の申告期限から3年を経過する日までに分割できないやむを得ない事情があり、税務署長の承認を受けた場合で、その事情がなくなった日の翌日から4か月以内に分割されたときも、税額軽減の対象になります。
申告期限までに分割できなかった場合(配偶者が取得する財産が決まっていない場合)には、「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付して、適用を先送りします。
申告期限後3年以内に分割できない場合には、「やむを得ない事由」があるときは、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出して、適用を先送りします。
この「やむを得ない事由」とは何でしょうか?
法的手続き等が一定の段階に進んでいるか?
相続税法施行令
第4条の2 配偶者に対する相続税額の軽減の場合の財産分割の特例
法第19条の2第2項に規定する政令で定めるやむを得ない事情がある場合は、次の各号に掲げる場合とし、同項に規定する政令で定める日は、これらの場合の区分に応じ当該各号に定める日とする。
一 当該相続又は遺贈に係る法第19条の2第2項に規定する申告期限(以下次項までにおいて「申告期限」という。)の翌日から3年を経過する日において、当該相続又は遺贈に関する訴えの提起がされている場合(当該相続又は遺贈に関する和解又は調停の申立てがされている場合において、これらの申立ての時に訴えの提起がされたものとみなされるときを含む。) 判決の確定又は訴えの取下げの日その他当該訴訟の完結の日
二 当該相続又は遺贈に係る申告期限の翌日から3年を経過する日において、当該相続又は遺贈に関する和解、調停又は審判の申立てがされている場合(前号又は第4号に掲げる場合に該当することとなつた場合を除く。) 和解若しくは調停の成立、審判の確定又はこれらの申立ての取下げの日その他これらの申立てに係る事件の終了の日
三 当該相続又は遺贈に係る申告期限の翌日から3年を経過する日において、当該相続又は遺贈に関し、民法第908条第1項若しくは第4項の規定により遺産の分割が禁止され、又は同法第915条第1項ただし書の規定により相続の承認若しくは放棄の期間が伸長されている場合(当該相続又は遺贈に関する調停又は審判の申立てがされている場合において、当該分割の禁止をする旨の調停が成立し、又は当該分割の禁止若しくは当該期間の伸長をする旨の審判若しくはこれに代わる裁判が確定したときを含む。) 当該分割の禁止がされている期間又は当該伸長がされている期間が経過した日
四 前3号に掲げる場合のほか、相続又は遺贈に係る財産が当該相続又は遺贈に係る申告期限の翌日から3年を経過する日までに分割されなかつたこと及び当該財産の分割が遅延したことにつき税務署長においてやむを得ない事情があると認める場合 その事情の消滅の日
家庭裁判所の調停など、一定の手続き段階に進んでいる場合等が、この「やむを得ない事由(今、こういう段階だから、遺産分割がまだ完了しないのはしょうがない)」に該当します。
想う相続税理士