相続税専門税理士の富山です。
今回は、親が管理していたお金や子名義の金融商品が、相続税の場面でどのように扱われるのかが問題となった判決事例について、お話します。
出典:TAINS(Z261-11762・Z262-11879)(一部抜粋加工)
平成23年9月9日判決・平成24年2月15日判決
名義が子でもそのまま子の財産になるとは限らない

ホームズ、親から子にお金が渡っていて、しかも子の名義で動いていたのなら、普通はそれを子の財産と考えたくなるね。
ワトスン君、相続税の世界では誰の財産かは名義だけでは決まらないんだよ。
実際に誰が管理していたのか、誰の判断で出し入れされていたのか、そして当事者がそれまでどう説明してきたのかが重く見られるんだ。
実際に誰が管理していたのか、誰の判断で出し入れされていたのか、そして当事者がそれまでどう説明してきたのかが重く見られるんだ。


すると、通帳や証券の名義が子であっても、親が実質的に管理していたなら、親の財産と見られることがあるわけだね。
そのとおりだよ。
今回の事案でも、借用書が作られていた金員について、裁判所は、親が管理していて、子の求めに応じて交付されていた点などを重視したんだ。
その上で、これは子の固有財産ではなく、親から子への貸付けだと判断した。
今回の事案でも、借用書が作られていた金員について、裁判所は、親が管理していて、子の求めに応じて交付されていた点などを重視したんだ。
その上で、これは子の固有財産ではなく、親から子への貸付けだと判断した。


借用書がある以上、後になって、あれは預けていた自分のお金だったとか、実は贈与だったという説明に変えるのは難しそうだね。
まさにそこなんだ。
裁判所は、借用書の存在だけでなく、遺言をめぐる和解の内容や、税務署に対する過去の説明も踏まえて、貸付金であることを前提とした言動があったと見ている。
つまり、後から都合よくお金の性質を言い換えるのは簡単ではない、ということなんだよ。
裁判所は、借用書の存在だけでなく、遺言をめぐる和解の内容や、税務署に対する過去の説明も踏まえて、貸付金であることを前提とした言動があったと見ている。
つまり、後から都合よくお金の性質を言い換えるのは簡単ではない、ということなんだよ。

金融商品の償還後のお金にも注意が必要

ホームズ、では、子名義で償還された債券のお金はどうなるんだい。
名義が子なら、その償還金も子のものと考えたくなるけれど。
名義が子なら、その償還金も子のものと考えたくなるけれど。
そこも大事なところだよ。
今回の事案では、割引金融債券そのものを、もっぱら被相続人、つまり亡くなった方が管理・運用していたと認定している。
そのため、償還時に子の名義でお金が動いていても、もともとの債券は親のものだと見られたんだ。
今回の事案では、割引金融債券そのものを、もっぱら被相続人、つまり亡くなった方が管理・運用していたと認定している。
そのため、償還時に子の名義でお金が動いていても、もともとの債券は親のものだと見られたんだ。


なるほど。
最初の財産が親のものと認定されると、その償還金を子が受け取ったこと自体が意味を持ってくるわけだね。
最初の財産が親のものと認定されると、その償還金を子が受け取ったこと自体が意味を持ってくるわけだね。
そのとおり。
裁判所は、子がその償還金を取得したり運用したりしている以上、それは親から子への贈与に当たると考えた。
そして、その贈与が相続開始前3年以内のものであれば、相続税法19条1項により、相続税の課税価格に加算される財産になると判断したんだ。
裁判所は、子がその償還金を取得したり運用したりしている以上、それは親から子への贈与に当たると考えた。
そして、その贈与が相続開始前3年以内のものであれば、相続税法19条1項により、相続税の課税価格に加算される財産になると判断したんだ。


相続の直前に近い時期のお金の動きは、名義だけで安心してはいけないということだね。
その理解でよいよ。
特に、親が持っていた金融商品が家族名義で償還されたり、償還金が子や孫の口座に流れたりしている場合は、相続財産なのか、生前贈与なのか、その両方の視点から丁寧に見直す必要があるんだ。
特に、親が持っていた金融商品が家族名義で償還されたり、償還金が子や孫の口座に流れたりしている場合は、相続財産なのか、生前贈与なのか、その両方の視点から丁寧に見直す必要があるんだ。

相続税で大切なのは名義より管理実態や過去の説明

ホームズ、この事案から、相続手続きが発生しそうなご家庭は何を学ぶべきかな。
一番の教訓は、家族のお金のやり取りを曖昧にしないことだよ。
貸したお金なのか、預かっているお金なのか、贈与したお金なのかが曖昧なままだと、相続が始まったときに大きな争点になる。
貸したお金なのか、預かっているお金なのか、贈与したお金なのかが曖昧なままだと、相続が始まったときに大きな争点になる。


しかも、そのときに見られるのは、単なる書類の形だけではないんだね。
そうなんだ。
誰が通帳や証券を保管していたのか、誰が判断して出し入れしていたのか、過去の訴訟や和解でどう整理していたのか、税務署にどう説明していたのかまで見られることがある。
相続税の実務では、名義よりも実態が重視される場面が少なくないんだよ。
誰が通帳や証券を保管していたのか、誰が判断して出し入れしていたのか、過去の訴訟や和解でどう整理していたのか、税務署にどう説明していたのかまで見られることがある。
相続税の実務では、名義よりも実態が重視される場面が少なくないんだよ。


では、親族間でお金を動かしている場合には、普段から整理しておく必要があるわけだ。
そのとおりだよ。
相続が起きてから説明を整えようとしても、過去の借用書や資金移動、会話の内容と合わなければ、かえって不利になることもある。
親族間だからこそ、借入れなのか贈与なのかをはっきりさせ、名義だけでなく管理実態まで説明できる状態にしておくことが大切なんだ。
相続が起きてから説明を整えようとしても、過去の借用書や資金移動、会話の内容と合わなければ、かえって不利になることもある。
親族間だからこそ、借入れなのか贈与なのかをはっきりさせ、名義だけでなく管理実態まで説明できる状態にしておくことが大切なんだ。

想う相続税理士
親子間・親族間のお金のやり取りは、曖昧なままで済んでしまいがちです。
ですが、相続が始まると、その曖昧さがそのまま税務上の争点になることがあります。
名義だけで判断せず、誰が管理していたのか、どのような性質のお金だったのかを、早めに整理しておくことが大切です。
