相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続した不動産を売却する時期の注意点について、お話します。
コンテンツ
一定期間内に売却すれば相続税が経費になる
国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋)
No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続または遺贈により取得した土地、建物、株式などの財産を、一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができます。
相続した不動産を売却して、儲け(譲渡所得)が発生した場合には、その儲けは、所得税の課税対象となります。
その不動産を、「相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで」に売却した場合、その儲けの計算の際、相続税の一部を経費にすることができます(「取得費加算の特例」と言います)。
つまり、同じ金額で売却するにしても、早い時期(上記の期間内)に売却できれば、所得税が安くなるのです。
ただし、売り急ぐことにより、買い叩かれたりして、売値が低くなってしまうと、特例の適用が受けられても、手取りが減ってしまう可能性がありますので、ご注意を。
逆に、上記の期間を経過してしまい、特例の適用が受けられなくても、高く売れれば、その方が手取りが増える可能性もあります。
誰も住んでいない亡くなった方のご自宅を売却した場合の特例がある
国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋加工)
No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
概要
相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円(複数譲渡の場合には1人当たり2,000万円の場合有)まで控除することができます。
相続で取得した空き家(亡くなった方が住んでいたご自宅)を売却した場合には、一定の要件に該当すれば、土地を売った儲けの金額から最高3,000万円(または2,000万円)を控除することができます。
つまり、土地を売った儲けの金額が2,000万円以下だったら、譲渡所得がゼロ(したがって、土地の売却に対する所得税がゼロ)になります。
こちらの特例も、「『相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで』かつ(現時点では)『令和9年12月31日まで』に売却した場合」という要件があります。
ご留意いただきたい点は、上記の「取得費加算の特例」と同様です。
事業・貸付・居住の用に供したらアウト
相続空き家の特例は、パターンによって、
相続の時から取壊し等の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと
相続人の方が住んだりすると、特例が適用できなくなります。
想う相続税理士
早く売却すると相続税の特例が適用できなくなる場合がある
相続税の計算においては、一定の居住用または事業用の宅地等について、その評価額を80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があり、大きくは「(1)特定事業用宅地等」「(2)特定同族会社事業用宅地等」「(3)特定居住用宅地等」「(4)貸付事業用宅地等」の4つの適用パターンがあります。
小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、「申告期限までの『所有継続要件』」(相続で取得した土地を申告期限まで持ち続ける)を満たす必要があります。
想う相続税理士秘書
土地が売れるぞ、と言って、申告期限までに売却してしまうと、小規模宅地等の特例が適用できなくなり、相続税が高くなってしまう可能性があります。
小規模宅地等の特例が適用できる前提で相続税の計算をし、その相続税が納税資金不足により払えないからと言って、その特例適用対象地を売却して、(売却に伴う所得税等の負担も計算に入れ)相続税の納税資金をギリギリ確保できたと思っても、申告期限までに売却したことにより、小規模宅地等の特例が適用できず、相続税が高くなることによって、その売却代金では相続税が全額納付できない、なんてことが起こり得ますので、ご注意を。
想う相続税理士