【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

税制改正により相続時精算課税制度は「お金持ちだけ」の制度ではなくなった?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、「相続時精算課税制度は財産が多い人向け」という先入観を捨て、税制改正後の新たな活用方法を検討することの重要性について、お話します。


相続税専門税理士に任せてスッキリ!
相続税専門税理士が直接対応
事前予約で土日祝日夜間対応可能
明確な料金体系+スピード対応

または はこちらから


相続時精算課税=富裕層向けの制度?

相続時精算課税制度は、長らく「財産の多い人のための制度」と考えられてきた節があると思います。

たとえば、非上場株式など、将来値上がりする可能性のある財産を保有している場合、早めに(評価額の低いうちに)後継者に贈与しておけば、値上がり後の相続時評価額で課税されずに済むというメリットがあります。

こうした戦略は、中小企業の経営者や資産家にとって有効であり、「相続時精算課税=富裕層向け」というイメージが定着していたのではないでしょうか?

ところが、令和5年度税制改正により、この制度の捉え方を大きく変えて、贈与戦略を変えている方がいらっしゃいます。

令和6年以降、相続時精算課税制度の仕組みに大きな変化があったからです。

令和6年以降は「誰でも使える制度」に進化?

令和6年分以降の贈与においては、相続時精算課税制度に「年間110万円の非課税枠(基礎控除額)」が新設されました。

これは暦年課税制度の110万円の基礎控除額とは異なり、相続時に加算されない「絶対的非課税枠」です。

つまり、この範囲内での贈与については、相続税の対象とならず、確実に節税効果を得ることができます。

一方、暦年課税制度は、生前贈与加算の対象になると、3年以内の贈与は相続財産に全額加算、3年超7年以内の贈与は100万円を控除した額が相続財産に加算される仕組みとなりました。

この違いにより、暦年課税制度により贈与をする場合には、より慎重な検討が必要となりました。

その点、相続時精算課税制度は、小口贈与であれば相続税がかからない可能性が高く、むしろ財産が少ない人にこそ適した制度になったと言えるのです。

少額贈与だからこそ活きる相続時精算課税制度

相続時精算課税制度を選択すると、それ以降の贈与はすべてこの制度が適用され、年間110万円を超える部分については相続時に加算されてしまいます。

ただし、相続税は「正味財産の金額」が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えなければ発生しません。

つまり、相続時精算課税贈与による贈与財産が相続税の課税対象になっても、そもそも全体の財産が少ない人であれば、相続税がかからない可能性が高いのです。

これは、相続時精算課税制度を活用して、早期に無税で財産移転ができる、ということを意味します。

また、今後の贈与戦略として、年110万円の「絶対的非課税枠」を毎年活用することで、着実に資産移転が進められるのも大きな利点です。

財産の多寡にかかわらず、制度を正しく理解し、生前贈与を計画的に活用することが重要です。

想う相続税理士

これまで「相続時精算課税はお金持ちの制度」と考えていた方も、制度改正後はその前提が変わりつつあります。

特に財産が少ない方こそ、この制度の非課税枠を活かして、生前贈与を進めるチャンスが広がっています。

「使える制度」として見直し、今のうちに将来の相続に向けた準備を始めましょう。

ただし、相続時精算課税制度にはデメリットもありますので、メリットばかりに目を向けるのではなく、ご自身の資産状況や将来の相続の見通しを踏まえて、慎重に検討することが大切です。