相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続時精算課税による贈与により取得した財産(「相続時精算課税適用資産」)を譲渡した場合の取得費加算の特例の適用について、お話します。
一定期間内に売却すれば相続税が経費になる
国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋)
No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続または遺贈により取得した土地、建物、株式などの財産を、一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができます。
相続した不動産を売却して、儲け(譲渡所得)が発生した場合には、その儲けは、所得税の課税対象となります。
その不動産を、「相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで」に売却した場合、その儲けの計算の際、相続税の一部を経費にすることができます(「取得費加算の特例」と言います)。
「相続」や「遺贈」ではなく、生前に「相続時精算課税による贈与」により取得した財産を譲渡した場合、この取得費加算の特例は適用できるのでしょうか?
相続時精算課税適用資産を譲渡した場合も取得費加算の特例の適用はOK
国税庁HP・資産課税課情報・第3号・平成16年2月13日・国税庁資産課税課(一部抜粋加工)
『「租税特別措置法(山林所得・譲渡所得関係)の取扱いについて」等の一部改正について(法令解釈通達)』の趣旨説明(情報)
【新設】(相続時精算課税適用者の死亡後に特定贈与者が死亡した場合)
39-21
《説明》
1 平成15年度の税制改正において、相続時精算課税制度が創設され、相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した資産については、贈与時の価額をもって当該特定贈与者に係る相続税の課税価格に算入することとされたことに伴い、相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(以下「取得費加算の特例」という。)においても、相続時精算課税の適用を受けた贈与財産が特例の適用対象に含まれることとされた。すなわち、特定贈与者の相続税の課税価格の計算の基礎に算入された贈与財産を、当該特定贈与者の相続開始日の翌日から3年10か月以内に、当該相続時精算課税適用者が譲渡した場合には、取得費加算の特例が適用できる旨の改正が行われたところである(措法391)。
上記にあるとおり、相続時精算課税贈与により取得した財産を譲渡した場合でも、要件を満たせば、取得費加算の特例を適用することができます。
相続時精算課税適用者死亡→特定贈与者死亡→相続時精算課税適用資産譲渡の場合
上記の図をご覧ください。
- Bさん(相続時精算課税適用者)がAさん(特定贈与者)から甲土地を相続時精算課税による贈与により取得
- Aさんが死亡する前にBさんが死亡
- Bさんの相続人であるCさんが甲土地を相続により取得
- Aさんが死亡
- CさんはBさんが負うべきだったAさんの死亡に伴う甲土地に係る相続税を承継
- Cさんは甲土地を譲渡
②当該相続時精算課税適用者に係る相続税額と当該特定贈与者に係る相続税額とのいずれについ ても、取得費加算の特例の対象として差し支えないことを明らかにしたものである。
この場合、Cさんが甲土地の譲渡に伴う所得税の確定申告をする際、Bさんの死亡に伴う「相続税①」、Aさんの死亡に伴う「相続税②」のどちらも、取得費加算の特例を適用できるのですが、そこにはルールがある、としています。
《取扱いの内容》
・Cの甲土地の譲渡時の取得費に加算される相続税額は、取得費に加算することが可能な譲渡益150を限度として、「相続税①」、「相続税②」の順に適用。ただし、Cが申告の際に、「相続税②」を先に選択することもできる。
・上記の場合に、例えば、譲渡益が100のときには、「相続税①」の100すべてを適用することとし、「相続税①」のうちの50、「相続税②」のうちの50といった一部ずつの選択はできない。
原則として、「相続税①」(相続時精算課税適用者に係る相続税)を先に適用するのですが、その際に、一部のみを対象とすることはできない、また、今の順番の話は、あくまで「原則」の話なので、「相続税②」(特定贈与者に係る相続税)を先に適用してもOK、としています。
想う相続税理士
租税特別措置法関係通達
39-13 相続時精算課税適用者の死亡後に特定贈与者が死亡した場合
に番号が変わっているようです。