【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

生命保険金の落とし穴-相続放棄との知られざる関係

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続放棄と生命保険金の関係について、お話します。


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亡くなった方の財産を取得できなくなる相続放棄

裁判所HP(一部抜粋加工)
相続が開始した場合、相続人は次の三つのうちのいずれかを選択できます。
1.相続人が被相続人(亡くなった方)の土地の所有権等の権利や借金等の義務をすべて受け継ぐ単純承認
2.相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない相続放棄
3.被相続人の債務がどの程度あるか不明であり、財産が残る可能性もある場合等に、相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ限定承認

相続人が相続放棄をした場合、亡くなった方の借入金等の債務を引き継がなくてもよくなる半面、亡くなった方の財産も取得できなくなります。

もし父Aさんが亡くなり、長男Bさんが相続放棄をした場合に、長男Bさんを受取人とする生命保険金があったとしたら、その生命保険金も相続放棄によって受け取ることができなくなるのでしょうか?

亡くなった方の財産ではない

生命保険金は亡くなった方の財産(相続財産)ではありません。

受取人が決まっているのですから、受取人(=長男Bさん)の財産(受取人固有の財産)です。

相続放棄をしても受け取ることができます。

生命保険金は亡くなった方の財産ではないのですが、その経済的実質は亡くなった方から財産をもらうのと同じ(亡くなった方が保険料を負担してくれていたことにより生命保険金という財産を取得できる)であるため、相続財産とみなして(「みなし相続財産」と言います)相続税の課税対象となります。

他の相続人と一緒に相続税申告

相続税の課税対象になる訳ですから、遺産総額が一定額を超えるような場合には、相続税の申告・納税が必要となります。

相続放棄をしたからといって、相続税の申告納税義務が免除される訳ではありません。

「私は財産をもらわない」と他の相続人に宣言して家庭裁判所で相続放棄の手続きをしても、相続税の申告は一緒にやることになるのです。

想う相続税理士

相続税の計算の仕組み上、自分が受け取った生命保険金だけで相続税を計算することはできません。

生前贈与加算の対象者になる

相続で財産を取得した方が、相続開始前3年以内(令和5年度税制改正により順次「7年」に延長されます)に、亡くなった方から生前に暦年課税贈与により取得した財産は、相続税の課税対象に加算されます(「生前贈与加算」と言います)。

生命保険金を受け取ると、この「相続で財産を取得した方」に該当するため、3年以内に亡くなった方から贈与を受けていると、その贈与財産にも相続税が課税されます。

生命保険金の非課税枠が使えなくなる

相続人の方が生命保険金を受け取った場合には、
500万円×法定相続人の数
の非課税枠を適用することができます。

しかし、相続放棄をすると、

民法(一部抜粋加工)
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす

ため、この生命保険金の非課税枠は適用できません。

生命保険金を受け取った後に相続放棄をしても非課税枠は適用できない、ということになります。

想う相続税理士秘書

他の相続人の節税には貢献できる

上記算式の「法定相続人の数」は、

相続税法(一部抜粋)
第15条 遺産に係る基礎控除
相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人の数

であるため、相続放棄をしても、生命保険金の非課税枠は減りません。

減らないけど使えなくなるのです。

使えるのは相続放棄をしていない他の相続人です。

想う相続税理士

相続放棄をする、ということは、遺産分割協議に参加しない(参加できない)、ということです。

遺産分割協議に参加した上で、結果的に財産をもらわない場合、つまり、自分が財産を全くもらわない内容の遺産分割協議書に、「はい、それでいいですよ」と署名押印するのは、上記の相続放棄には該当しません。

したがって、その場合には生命保険金の非課税枠を適用することができますので、ご注意を。