【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

行き止まり私道にも「路線価」は設定される?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、私道に路線価を設定できるかどうかが争われた裁決事例について、お話します。

出典:TAINS(F0-3-223)(一部抜粋加工)
平17-07-01裁決


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「路線価」とは?「正面路線価」とは?

相続税の土地評価では、土地が「どの道路に面しているか」で評価が大きく動くことがあります。

とくに市街地の宅地では、「路線価方式」により、道路ごとに定められた1㎡当たりの単価(「路線価」)を基礎に評価するのが一般的です。

その際に重要になるのが、「正面路線価」です。

ザックリ言うと、評価対象の土地に「正面として面している道路」に付された路線価を基準にする、という発想です。

路線価が付されるのは公道のみ?

ここで問題になりやすいのが、「道路=公道」と思い込んでしまうことです。

実務上、土地の前が私道だったり、行き止まりだったり、または河川沿いの管理通路のように「道っぽいもの」だったりすると、「この道に路線価が付くのか」「正面路線価はどれなのか」で争いが生じます。

今回の裁決は、まさにこの点が正面から問題になりました。

行き止まり私道でも路線価は設定され得る

本件は、相続した土地の評価方法等が争点となった事案です。

請求人側は、「通り抜けできない私道に路線価を設定し、それを正面路線価にするのは評価通達に反する」という趣旨で争いました。

これに対して裁決は、「路線価を設定できる路線」は公道に限られない、という考え方を示しています。

この場合の路線価とは、評価通達14の定めにより、宅地の価額がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線ごとに設定することとされ、「路線価」を設定することができる路線とは、不特定多数の者の通行の用に供されている道路をいうものとされており、いわゆる公道のみを指すものではなく、現に不特定多数の者の通行の用に供されている私道も含まれると解するのが相当である。

そして、本件私道については、家屋が建ち並び、居住者が利用しており、通行が特定の者だけに厳格に制限されている状態ではないことなどが踏まえられました。

さらに、建築基準法上の「道路」に当たり得ること、道路内建築の制限や私道の変更・廃止の制限といった公法上の制約があることもポイントとして挙げられています。

結論として、当該私道に路線価を設定することは相当であり、その私道に面する宅地は、その私道の路線価を正面路線価として評価するのが相当だ、と判断されています。

上記の結論から、何でも(路線価が付される)「道路」になる、と判断すると間違えます。

「道に見えるもの=道路」という訳ではありません。

本件では、河川区域内の通路について、河川管理のための通路であって道路ではないことが明らかとして、そこに設定された路線価を正面路線価にするのは相当でない、とされています。

つまり、現地で「通れる」としても、その通路が何のための通路なのか(道路なのか、管理用通路なのか)をきちんと確認する必要がありますので、ご注意を。

想う相続税理士秘書

想う相続税理士

次の土止費の論点も重要です。

原処分庁は、宅地造成費のうち土止費について、■土地に接している面と本件河川通路に接している面については、それぞれ隣接地との高さが一致することから、土止めをする必要性は認められないと主張する
しかしながら、農地の評価単位は、評価通達7-2の(2)により、1枚の農地ごととすることが相当であることから、宅地造成費も1枚の農地ごとに算定することが相当である。そうすると、市街地農地を評価する場合の宅地造成費のうち土止費は、既に道路と接している面あるいは隣接地との境界に評価対象地の所有者が既に擁壁を設置している場合など土止めの必要性が認められない面を除き、その他の面については擁壁の設置が必要であるとして算定することが相当である。
そして、J土地の現況は、上記(1)のヲのとおり、①北西側に存する擁壁は■がその敷地内に設置したものであること、②北東側に存する■の土地には下水道管が埋設されており、当該下水道管を保護するため擁壁が必要であること、③南東側で接している田との間には擁壁が設置されていないこと、及び④南西側で接している土地との間にも擁壁が設置されていないことから、J土地に必要な土止めの面数は4面であると認められる