相続税専門税理士の富山です。
今回は、「第2次相続の開始後に第1次相続に係る遺産分割が行われた場合、相続税の課税対象をどう考えるのか?」について争われた裁決事例について、お話します。
出典:TAINS(F0-3-643)(一部抜粋加工)
平30-06-25裁決
「申告時点では」共有持分
相続の現場では、「遺産分割がまだ終わっていない」という状態が珍しくありません。
本件も、父(第2次被相続人)の相続が始まった時点で、父のさらに前の世代(父の父、父の祖父)の不動産が未分割でした。
そこで相続人側は、父が持っていたのは未分割不動産の「共有持分」であると考えて、まずはその前提で相続税申告をしています。
ところがその後、家庭裁判所の調停や審判によって、前の世代の遺産分割が進み、結果として不動産の全部を特定の相続人が取得する形になりました。
この「後から確定した遺産分割の結果」を、父の相続税にどう反映させるのか。
ここが大きな争点になりました。
遺産分割の「遡及効」
裁決では、ポイントとして「遺産分割の遡及効(民法909条)」を正面から使っています。
民法(一部抜粋)
(遺産の分割の効力)
第九百九条 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
「遡及効(そきゅうこう)」とは、法律行為などの法的効果が、その成立時点よりも前の時点にさかのぼって生じることを言います。
遺産分割は、法律上は「相続開始時にさかのぼって」効力が生じる、という考え方です。
そのため、第2次相続が始まった「後」に第1次相続の遺産分割が成立したとしても、分割の効果は第1次相続の開始時にさかのぼります。
結果として、第2次被相続人(父)が第1次相続で取得することになった財産は、父の相続財産(課税相続財産)に含まれる、という整理になりました。
第2次被相続人に分割された第1次相続の相続財産は、第2次相続の開始後に第1次相続に係る遺産分割が行われたとしても、遺産分割の遡及効(民法第909条本文)が適用されて当該遺産分割が第1次相続の開始時に遡ってその効力を生ずることにより、第2次相続に係る課税相続財産に含まれると解するのが相当である。
「相続税は相続開始時点で決まるはずだ」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、そうならない場合もあるのです。
未分割のまま次の相続が発生したら注意
「前の世代の相続が未分割のまま、次の相続(第2次相続)が起きる」というケースは、思っている以上にあります。
その場合、相続税の申告時点では「共有持分」として計算せざるを得ないことがあります。
ただし、その後に遺産分割(調停・審判を含む)が成立すると、課税対象となる財産の捉え方が変わる場合があるので、注意が必要です。
想う相続税理士

