相続税専門税理士の富山です。
今回は、亡くなった方が「認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)」に入居していた場合の、相続税申告における小規模宅地等の特例の適用について、お話します。
相続税の申告における小規模宅地等の特例とは?
相続税の計算においては、一定の居住用または事業用の宅地等について、その評価額を80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があり、大きくは「(1)特定事業用宅地等」「(2)特定同族会社事業用宅地等」「(3)特定居住用宅地等」「(4)貸付事業用宅地等」の4つの適用パターンがあるのですが、亡くなった方のご自宅について「(3)特定居住用宅地等」を適用するケースが最も多いと思われます。
亡くなる直前は介護を必要とされていたことから、ご自宅に居住することができなかったため、ご自宅にお住まいになっていなくて、特別養護老人ホームに入所されていた、という場合でも、一定の要件を満たせば、小規模宅地等の特例を適用することができます。
国税庁HP・質疑応答事例(一部抜粋)
老人ホームへの入所により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例
【照会要旨】
被相続人は、介護保険法に規定する要介護認定を受け、居住していた建物を離れて特別養護老人ホーム(老人福祉法第20条の5)に入所しましたが、一度も退所することなく亡くなりました。
被相続人が特別養護老人ホームへの入所前まで居住していた建物は、相続の開始の直前まで空家となっていましたが、この建物の敷地は、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当しますか。
【回答要旨】
照会のケースにおける、被相続人が所有していた建物の敷地は、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当することになります。
特別養護老人ホーム以外は適用不可?
特別養護老人ホーム以外でも、次のような施設に入所または入居されていた場合、一定の要件を満たせば、小規模宅地等の特例を適用することができます。
租税特別措置法施行令
第40条の2 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
2 法第69条の4第1項に規定する居住の用に供することができない事由として政令で定める事由は、次に掲げる事由とする。
一 介護保険法第19条第1項に規定する要介護認定又は同条第2項に規定する要支援認定を受けていた被相続人その他これに類する被相続人として財務省令で定めるものが次に掲げる住居又は施設に入居又は入所をしていたこと。
イ 老人福祉法第5条の2第6項に規定する認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居、同法第20条の4に規定する養護老人ホーム、同法第20条の5に規定する特別養護老人ホーム、同法第20条の6に規定する軽費老人ホーム又は同法第29条第1項に規定する有料老人ホーム
ロ 介護保険法第8条第28項に規定する介護老人保健施設又は同条第29項に規定する介護医療院
ハ 高齢者の居住の安定確保に関する法律第5条第1項に規定するサービス付き高齢者向け住宅(イに規定する有料老人ホームを除く。)
二 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第21条第1項に規定する障害支援区分の認定を受けていた被相続人が同法第5条第11項に規定する障害者支援施設(同条第10項に規定する施設入所支援が行われるものに限る。)又は同条第18項に規定する共同生活援助を行う住居に入所又は入居をしていたこと。
認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)は適用対象施設?
亡くなった方が、認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)に入居していた場合はどうでしょうか?
上の中だと、「老人福祉法第5条の2第6項に規定する『認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居』」が言葉としては一番近いですが、ちょっと違います。
そこで、老人福祉法を調べてみます。
老人福祉法
(定義)
第五条の二
6 この法律において、「認知症対応型老人共同生活援助事業」とは、第十条の四第一項第五号の措置に係る者又は介護保険法の規定による認知症対応型共同生活介護に係る地域密着型介護サービス費若しくは介護予防認知症対応型共同生活介護に係る地域密着型介護予防サービス費の支給に係る者その他の政令で定める者につき、これらの者が共同生活を営むべき住居において入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の援助を行う事業をいう。
認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)に入居されていた場合には、一定の要件を満たせば、小規模宅地等の特例を適用することができるものと思われます。
想う相続税理士
