相続税専門税理士の富山です。
今回は、贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)について、お話します。
婚姻期間20年以上の夫婦間のご自宅贈与には特例がある
国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋)
No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
概要
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、贈与税の申告をすることにより基礎控除額110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。
夫Aさんがマイホーム(敷地(以下「土地」)+家屋(以下「建物」))を所有しているとします。
妻Bさんとの婚姻期間が20年以上であれば、そのマイホームを妻Bさんに贈与した場合、2,000万円の配偶者控除を適用することができます。
そして、その贈与の後3年以内に夫Aさんが亡くなった場合、つまり、マイホームの贈与が夫Aさんの相続開始前3年以内の贈与に該当した場合であっても、そのマイホームは相続税の課税対象にはなりません(生前贈与加算の対象外です)。
土地+建物の評価額が2,000万円を超える場合には、その超える部分は生前贈与加算の対象となります。
そのような場合、土地と建物のどちらを優先した方がいいのでしょうか?
土地はそのまま所有していれば小規模宅地等の特例が適用可
「贈与税の配偶者控除はあまり意味がない」という税理士もいます。
相続の際、配偶者は財産を取得しても、「配偶者の税額軽減」により、1億6,000万円まで相続税がかからないからです。
しかし、1億6,000万円を超える場合もありますし、相続税がかからなくても、ご自宅を早めに配偶者に移転しておきたい、と考える場合もあります。
土地は夫Aさんが亡くなった際、妻Bさんが相続すれば、小規模宅地等の特例を適用することができ、330㎡まで80%引きで相続できます。
ですから、建物を優先して贈与する、という考え方があります。
建物は評価額が下がる
通常、建物は時の経過とともに、評価額が下がります。
下がる前に配偶者に贈与するより、下がった後に配偶者が相続した方がトク、という考え方があります。
そうすると、土地を優先して贈与する、ということになります。
土地の面積が広く、330㎡を超える場合には、「贈与」と「相続」の2段階で「非課税」+「非課税・減額」の適用を受けられる、ということになります。
マイホームを売却する可能性がある場合
ずっとマイホームに住み続ける予定ではあるものの、もしかすると、将来的には老人ホームに夫婦一緒に入るかもしれない、その時には資金捻出のためにマイホームを売却するかもしれない、そして実はマイホームの時価が高い、というような場合には、土地の一部・建物の一部を贈与し、マイホームを共有にしておくことで、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」がダブルで適用できることにより、売却時の税金が安くなる可能性があります。
想う相続税理士