相続税専門税理士の富山です。
今回は、亡くなった方の奥様のお腹の中に赤ちゃん(胎児)がいる場合の相続税申告について、お話します。
相続税の申告期限までに生まれた場合
Aさんがお亡くなりになり、Aさんの奥様(Bさん)との間に長女(Cちゃん)がいて、さらに、Bさんのお腹の中に赤ちゃん(Dちゃん)がいる場合、そのDちゃんが相続税の申告期限までに生まれたときは、そのDちゃんはAさんの相続人となります。
Aさんの相続人は、「Bさん」・「Cちゃん」・「Dちゃん」となります。
遺産に係る基礎控除額(相続税の非課税枠)は、
3,000万円+600万円×法定相続人の数3人=4,800万円
となります。
相続税の申告期限までに生まれなかった場合
Eさんがお亡くなりになり、Eさんの奥様(Fさん)との間に長女(Gちゃん)がいて、さらに、Fさんのお腹の中に赤ちゃん(Hちゃん)がいる場合、そのHちゃんが相続税の申告期限までに生まれなかったときは、そのHちゃんはEさんの相続人とはなりません。
Eさんの相続人は、「Fさん」・「Gちゃん」となります。
遺産に係る基礎控除額(相続税の非課税枠)は、
3,000万円+600万円×法定相続人の数2人=4,200万円
となります。
相続税の申告期限後に生まれた場合
上記の赤ちゃん(Hちゃん)が相続税の申告期限後に生まれたときは、そのHちゃんはEさんの相続人となります。
Eさんの相続人は、「Fさん」・「Gちゃん」・「Hちゃん」となります。
遺産に係る基礎控除額(相続税の非課税枠)は、
3,000万円+600万円×法定相続人の数3人=4,800万円
となります。
上記の、「遺産に係る基礎控除額=4,200万円」で期限内申告をしている場合、「遺産に係る基礎控除額=4,800万円」で相続税を再計算することができます。
想う相続税理士
相続税法(一部抜粋加工)
第32条 更正の請求の特則
相続税又は贈与税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する事由により当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額が過大となつたときは、当該各号に規定する事由が生じたことを知つた日の翌日から4月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額又は贈与税額につき更正の請求をすることができる。
二 民法第787条又は第892条から第894条までの規定による認知、相続人の廃除又はその取消しに関する裁判の確定、同法第884条に規定する相続の回復、同法第919条第2項の規定による相続の放棄の取消しその他の事由により相続人に異動を生じたこと。
相続税法基本通達(一部抜粋加工)
32-1 「その他の事由により相続人に異動が生じたこと」の意義
法第32条第1項第2号に規定する「その他の事由により相続人に異動が生じたこと」とは、民法第774条《嫡出の否認》に規定する嫡出の否認、同法第886条に規定する胎児の出生、相続人に対する失踪の宣告又はその取消し等により相続人に異動を生じた場合をいうのであるから留意する。
赤ちゃんは相続税の申告をどうやってやる?
Hちゃんは未成年者であるため、自分で相続税の申告をすることができません。
代わりに法定代理人が申告することになります。
そして、それに伴い、そのHちゃんの相続税の申告期限は、法定代理人が「生まれたことを知った日の翌日から10ヶ月以内」となります。
相続税法基本通達
27-4 「相続の開始があったことを知った日」の意義
法第27条第1項及び第2項に規定する「相続の開始があったことを知った日」とは、自己のために相続の開始があったことを知った日をいうのであるが、例えば、次に掲げる者については、次に掲げる日をいうものとして取り扱うものとする。
(6) 民法第886条の規定により、相続について既に生まれたものとみなされる胎児 法定代理人がその胎児の生まれたことを知った日
出生により相続人の順位が変わる場合
Iさんがお亡くなりになり、Iさんの奥様(Jさん)との間にお子さんはいないのですが、Jさんのお腹の中に赤ちゃん(Kちゃん)がいる場合、そのKちゃんが相続税の申告期限までに生まれなかったときは、そのHちゃんはIさんの相続人とはなりません。
Iさんのご両親(Lさん・Mさん)がご健在であれば、Iさんの相続人は、「Jさん」・「Lさん」・「Mさん」となります。
遺産に係る基礎控除額(相続税の非課税枠)は、
3,000万円+600万円×法定相続人の数3人=4,800万円
となります。
Kちゃんが相続税の申告期限後に生まれた場合には、Iさんの相続人は、
「Jさん」・「Lさん」・「Mさん」
から
「Jさん」・「Kちゃん」
に変わり、それに伴い、遺産に係る基礎控除額(相続税の非課税枠)は、
3,000万円+600万円×法定相続人の数2人=4,200万円
に減少します。
想う相続税理士秘書
想う相続税理士
相続税法基本通達(一部抜粋加工)
27-6 胎児がある場合の申告期限の延長
相続開始の時に相続人となるべき胎児があり、かつ、相続税の申告書の提出期限までに生まれない場合においては、当該胎児がないものとして相続税の申告書を提出することになるのであるが、当該胎児が生まれたものとして課税価格及び相続税額を計算した場合において、相続又は遺贈により財産を取得したすべての者が相続税の申告書を提出する義務がなくなるときは、これらの事実は、通則法基本通達(徴収部関係)の「第11条関係」の「1(災害その他やむを得ない理由)の(3)」に該当するものとして、当該胎児以外の相続人その他の者に係る相続税の申告書の提出期限は、これらの者の申請に基づき、当該胎児の生まれた日後2月の範囲内で延長することができるものとして取り扱うものとする。