【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

不動産の売買契約締結後・所有権移転登記前に相続が発生した場合の取得費加算の特例

相続税専門税理士の富山です。

今回は、不動産の売買契約締結後・所有権移転登記前に、売主または買主に相続が発生した場合の取得費加算の特例の適用について、お話します。


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相続が発生しても売買契約は無効にならない

土地建物の売買契約後・引渡決済前に相続があった場合の取扱い

上記の記事でもお話したとおり、不動産の売買契約締結後・所有権移転登記前に、

  1. 売主(Aさんとします)に相続が発生した場合には、売買代金請求権を相続財産として計上(手付金は控除・既経過利息を加算)
  2. 買主(Bさんとします)に相続が発生した場合には、①引渡請求権を原則として売買契約上の売買代金(購入代金)で計上(購入代金のうち未払部分は債務控除の対象)、または、②その土地や建物を路線価方式や倍率方式等により評価し相続財産として計上
という取扱いになります。

一定期間内に売却すれば相続税が経費になる

国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋)
No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続または遺贈により取得した土地、建物、株式などの財産を、一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができます。

相続した不動産を売却して、儲け(譲渡所得)が発生した場合には、その儲けは、所得税の課税対象となります。

その不動産を、「相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで」に売却した場合、その儲けの計算の際、相続税の一部を経費にすることができます(「取得費加算の特例」と言います)。

上記のAさんとBさんの相続人の方も、この特例が適用できる場合があります。

売主Aさんの相続人aさんの取扱い

国税庁HP(一部抜粋)
譲渡所得の申告時期
譲渡所得は、原則として、譲渡した資産の引渡しがあった日(注)の属する年の所得として申告する必要があります。
なお、例外として、売買契約などの効力発生の日(農地法の転用等の許可や届出がないと所有権を移転できない農地等については、売買契約などを締結した日)の属する年の所得として申告することもできます。
(注) 「引渡しがあった日」は、その資産について当事者間で行われる支配の移転の事実(例えば、所有権移転登記に必要な書類等の交付)に基づいて総合的に判定することになりますが、原則として、譲渡代金の決済が終わった日より後にはなりません。

上記の取扱いによると、不動産を売却した場合には「譲渡した資産の引渡しがあった日」「売買契約などの効力発生の日」のどちらで確定申告してもいい、ということになります。

「譲渡した資産の引渡しがあった日」を選択する場合、その日に売主Aさんが亡くなっている場合には、相続人aが確定申告をすることになります。

この場合には、相続人aさんの確定申告において、取得費加算の特例を適用することができます。

国税庁HP・質疑応答事例(一部抜粋加工)
相続開始時点で売買契約中であった不動産の譲渡についての相続税額の取得費加算の特例の適用
①売買契約中の売主に相続が開始し、その相続人が当該契約に係る譲渡所得の申告をする場合

取得費加算の特例の計算において、相続税を按分する際の分子「譲渡資産の価額」は、「当該土地等又は建物等の譲渡収入金額(残代金請求権+手付金に相当する額)」となります。

また、相続税を按分する際の分母の「その相続人の債務控除額」には、「その相続人の売買契約中の土地等又は建物等に係る譲渡収入金額から残代金請求権の価額を控除した金額(前受金債務に相当する額)」を加算します。

買主Bさんの相続人bさんの取扱い

相続人bさんが買主Bさんから相続した上記の不動産を転売した場合、相続人bさんの確定申告において、取得費加算の特例を適用することができます。

②売買契約中の買主に相続が開始し、その相続人が当該契約に係る土地等又は建物等を転売した場合
相続人が転売した売買契約中の土地等又は建物等に係る相続税の課税は、その土地等又は建物等の引渡請求権に対して行われ、その価額は原則として当該契約に係る取得価額とされますが、当該契約に係る土地等又は建物等を相続財産とする申告を行うことも認められ、その価額は当該土地等又は建物等を財産評価基本通達により評価した価額とされます(質疑応答事例「相続開始時点で売買契約中であった不動産に係る相続税の課税」参照)。
したがって、売買契約中の買主に相続が開始した場合で、その相続人が当該土地等又は建物等を転売したときは、相続税を按分する際の分子「譲渡資産の価額」は相続税の申告内容に応じて、引渡請求権の価額(取得価額)又は土地等若しくは建物等の価額(財産評価基本通達により評価した価額)となります。

相続税を按分する際の分子「譲渡資産の価額」は、買主に相続が開始した場合には、売買契約中の土地等又は建物等の引渡請求権が相続財産となり、その価額は「原則として当該契約に係る取得価額」となります。

また、売買契約中の買主に係る相続税の申告において当該契約に係る土地等又は建物等を相続財産として申告した場合には、その価額は「当該土地等又は建物等を財産評価基本通達により評価した価額」となります。

想う相続税理士

売主Aさんの相続発生時に「譲渡した資産の引渡しがあった日」を選択した方が「取得費加算の特例」が適用できるから必ず有利、という訳ではありませんので、ご注意を。