【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

売却する予定の土地は配偶者が相続すると損をする?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続財産の中に土地があり、その土地については、所有し続ける考えはなく、売却を考えている、という場合、その土地は誰が相続すべきか、ということについて、お話します。


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相続した土地を一定期間内に売却すれば相続税が経費になる

国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋)
No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続または遺贈により取得した土地、建物、株式などの財産を、一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができます。

相続した不動産を売却して、儲け(譲渡所得)が発生した場合には、その儲けは、所得税の課税対象となります。

その不動産を、「相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで」に売却した場合、その儲けの計算の際、相続税の一部を経費にすることができます(「取得費加算の特例」と言います)。

つまり、所得税が安くなります。

相続税が出なければ取得費加算の特例は使えない

所得税の確定申告における住宅ローン控除のように、相続税の申告にも「税額控除」があります。

配偶者の方や未成年者の方、障害者の方は、一定の要件を満たせば、「配偶者の税額軽減」「未成年者控除」「障害者控除」を適用することができます。

もし、これらを適用することにより、相続税がゼロになった場合、取得費加算の特例は適用できません。

相続税を経費にしようにも、ゼロだからです(適用しても、相続税が出る場合、その出た部分については、一定の要件を満たせば、経費になります)。

ということは、売却する予定がある土地については、これらの方が相続しない方がいいのでしょうか?

二次相続の争族対策・納税資金対策には有効

父・母・子A・子Bという家族がいたとします。

父が亡くなったら(「一次相続」と言います)、相続人は母・子A・子Bです。

法定相続人は3人です。

その後、母が亡くなったら(「二次相続」と言います)、相続人は子A・子Bです。

法定相続人は2人です。

二次相続になり、相続人の数が少なくなると、相続税の非課税枠が少なくなったりするので、同じ財産でも、相続税が高くなる可能性があります。

また、(一次相続の遺産分けは、母が主導権を握って話をまとめることができたり、子A・子Bがモメたら母が可哀想だ、と考えたりしてまとまったとしても)二次相続は、子A・子Bにとっての親(母)がいなくなるため、モメる可能性があります。

一次相続で母が相続した不動産が売却され現金化していれば、納税資金に充てることもできますし、遺産分けもしやすくなります(争族回避につながります)。

配偶者なら申告期限までに売却してもOK

配偶者の方が亡くなった方のご自宅の敷地を相続した場合、特定居住用宅地等として、小規模宅地等の特例を適用することができ、330㎡まで80%引きで評価することができます。

「『配偶者の税額軽減』を適用したら、1億6,000万円までは相続税がかからないんだから、適用を受けてもムダでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、配偶者の税額軽減を適用することにより、全体の財産を金額が減るため、適用される相続税の実効税率を引き下げる効果があります(相続税は財産が多ければ多いほど税率が高くなる「超過累進税率」であるため、逆に全体の財産の金額が減れば、適用される税率が低くなり、それは他の相続人の相続税を安くする効果を生じます)。

この、特定居住用宅地等を配偶者の方が取得したパターンの場合には、申告期限までの所有継続要件が課せられません。

申告期限前に売却しても、小規模宅地等の特例を適用することができます。

配偶者以外の方が相続で取得した場合には、申告期限前に売却すると、小規模宅地等の特例が適用できません。

すぐに売ってくれるなら買う、申告期限までは待てない、という買い手が現れている場合には、配偶者が相続で取得すれば、小規模宅地等の特例を適用して、相続税を安くした上で、売却することができます。

想う相続税理士

特定居住用宅地等は、亡くなった方のご自宅敷地だけではなく、亡くなった方の生計一親族のご自宅敷地に対しても適用できますが、配偶者が生計一親族のご自宅敷地を相続したケースでも、申告期限までの所有継続要件が課せられませんので、ご注意を。