相続税専門税理士の富山です。
今回は、個人事業者として事業を営むのか、会社経営者及び株主として事業を営むのかによって、相続税にどのような違いが出るのか、ということについて、お話します。
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お金が貯まるのは誰の口座?
個人Aさんが事業を営んでいて、毎年、利益がどんどん出るのに合わせて、お金がどんどんAさんの個人の口座に貯まっていけば、そのお金は、Aさんが亡くなった場合、Aさんの相続財産になります。
そのAさんが会社(B社)を設立して、会社で事業を営んだら、どうなるでしょうか?
毎年、利益がどんどん出るのに合わせて、お金が貯まっていくのはB社の口座です(Aさんの相続財産は増えません)。
利益が出ると(蓄積すると)株式の評価額は上がる
このような場合、Aさんがお金を出して(出資して)B社を設立し、B社の社長に就任することが多いと思います(出資額を1,000万円とします)。
そうすると、そのB社の株式(B社株式)が、Aさんの相続財産になります。
毎期、利益がどんどん出ると、その利益(の蓄積)は、(原則として)B社株式の評価額を引き上げる要因となります。
また、毎期、利益がどんどん出るのに合わせて、B社口座にお金が貯まると、その財産の増加も、(原則として)B社株式の評価額を引き上げる要因となります。
役員報酬で株式の評価額が下がり個人の財産が増える
B社の社長であるAさんは、B社から役員報酬を受け取ります。
その受け取った役員報酬(Aさんの個人口座に振り込まれる役員報酬)は、Aさんの相続財産になります。
役員報酬を支払えば支払うほど、利益が減り、預金残高が減るので、それは(原則として)B社株式の評価額を引き下げる要因となります。
株式を所有していなかったらどうなる?
B社を設立する際、Aさんだけでなく、Aさんの長男のCさんも出資(Aさん・Cさんで500万円ずつ出資)したらどうなるでしょうか?
B社株式の評価額が2倍になる場合、Aさんが全額出資していると、Aさんの相続財産が1,000万円増加します。
しかし、Cさんが半分出資していれば(Aさんが500万円しか出資していなければ)、Aさんの相続財産は500万円しか増加しません。
親族に給与(役員報酬)を支払ったらどうなる?
また、Aさんが役員に就任するだけでなく、CさんもB社の役員(例えば専務)に就任したら、どうなるでしょうか?
Cさんに役員報酬を支払えば支払うほど、利益が減り、預金残高が減るので、それは(原則として)B社株式の評価額を引き下げる要因となります。
Cさんが受け取った役員報酬(Cさんの個人口座に振り込まれる役員報酬)は、Cさんの財産であるため、Aさんの相続財産にはなりません(Aさんの相続財産を増加させません)。
相続税対策としての株式の生前贈与
また、株式の評価額が2倍になる前に、Aさんの所有するB社株式をCさんに贈与したら、どうなるでしょうか?
そのままAさんが所有していたら、Aさんの相続財産が500万円から1,000万円になるところ、500万円のうちに暦年課税による贈与を受けると、(生前贈与加算の対象にならなければ)相続税はかからず、500万円に対する贈与税が課税されます。
相続時精算課税による贈与であれば、相続税がかかりますが、相続税が課税されるのは500万円に対してです(値上がり分には相続税が課税されません)。
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