相続税専門税理士の富山です。
今回は、遺留分と相続放棄について、お話します。
遺言がなくても遺留分侵害額の請求をされる可能性がある
民法(一部抜粋加工)
(遺留分侵害額の請求)
第千四十六条 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
遺言がなくても、亡くなった方から生前に多額の贈与を受けていると(「受贈者」だと)、他の相続人から遺留分侵害額の請求を受ける可能性があります。
生前贈与はどこまでさかのぼる?
民法(一部抜粋加工)
(遺留分を算定するための財産の価額)
第千四十四条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。
相続人が亡くなった方から生前に多額の贈与を受けていた場合には、相続開始前10年以内の贈与が遺留分侵害額の請求対象となります。
相続人以外の場合には、相続開始前1年以内です。
想う相続税理士秘書
相続後に相続人でなくなることができる
相続人が亡くなった方から8年前に多額の贈与を受けていた場合、その贈与は相続開始前10年以内の贈与に該当するため、他の相続人からの遺留分侵害額の請求対象となります。
民法(一部抜粋)
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
しかし、相続放棄をすると、相続人ではなくなります。
他の相続人からの遺留分侵害額の請求対象となるのは、相続放棄により相続人でなくなれば、相続開始前1年以内の贈与ですから、8年前の多額の贈与は対象外となります。
相続放棄は「損害を加えることを知って」やったことになる?
民法の条文上は、「1年」とか「10年」とか関係なく生前贈与が遺留分侵害額の請求対象となるのは、「損害を加えることを知って『贈与をしたとき』」となっています。
相続発生後に、「損害を加えることを知って」相続放棄をすると、「1年」とか「10年」とか関係なくなる、とは書かれていません。
想う相続税理士