【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続で取得した土地の評価減、「私道」や「振動・忌み・軟弱地盤」をどう証明する?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続で取得した土地について、「通路(私道)としての評価」「振動・忌み・軟弱地盤を理由とする評価減」が争点になった裁決事例について、お話します。

出典:TAINS(F0-3-877)(一部抜粋加工)
令04-09-20裁決


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土地は安く評価できる?

相続税の土地評価は、路線価で機械的に決まるようでいて、実務では「その土地の使われ方」「価格に効くマイナス要因」が争点になります。

今回の裁決では、大きく次のテーマが正面から争われました。

1つ目は、細長い通路状の土地です。

この通路を「私道だから価値が下がる」と見て別評価にするのか、それとも周りの土地と一体で評価するのか。

2つ目は、振動・忌み・軟弱地盤といった「住みにくさ」がある土地です。

「利用価値が著しく低下している」として一定の評価減を主張する場合、税務調査では「気のせい」「印象」ではなく、客観的資料を求められます。

税務調査で刺さるのは「利用実態」と「相続開始日時点」

調査でまず見られるのは、登記よりも現況です。

特に通路状の土地は、「誰が、何のために、専用で使っているのか」が評価の分かれ目になります。

賃貸中の建物の入居者が、その通路部分を「自分の出入りのためだけ」に使っているなら、通路部分は借家人の利用と結びつきやすく、敷地と一体で評価されやすいです。

一方で、複数の土地が共同で使う通路なのか、第三者の通行に供しているのか、封鎖できるのか、といった事情が違えば評価の整理も変わり得ます。

ここで重要なのは、資料を「相続開始日」に寄せることです。

税務署はよく「それは今の話ですよね」と突いてきます。

写真があるなら撮影日、ストリートビューなら表示年月、賃貸借契約書なら契約開始日と内容、門扉や塀の位置、舗装の有無、上下水道管や電柱の状況などを、できるだけ相続開始日に近い形で揃えます。

評価減を通すなら「3点セット」を証拠で固める

振動や忌み、軟弱地盤を理由に「利用価値が著しく低下している」と言う場合、最終的に問われるのは「市場価格に効いているか」です。

裁決文でも、評価減が認められるための要件が整理されています。

(ハ)したがって、震動等により利用価値が著しく低下している宅地として本件取扱いにより減額して評価することができるのは、①当該宅地の評価に当たって用いる路線価が震動等の要因を考慮して付されたものではないこと(路線価における震動等の要因のしんしゃく)、②震動等が生じていること(震動等の発生状況)及び③震動等により当該宅地の取引金額が影響を受けると認められること(震動等による取引金額への影響)の3つの要件が満たされている場合とするのが相当である。

この「3点セット」は、実務に置き換えると次のようになります。

①路線価に織り込み済みではないこと

ここを突破できないと、いくら測定しても評価減は通りにくくなります。

近隣比較や、同種の要因がないエリアとの価格差など、「織り込み済みではない」と言える材料が必要です。

②発生状況の立証

振動なら、測定条件が命です。

日時、場所、方向、列車の状況などを記録して、再現できる形にします。

③取引金額への影響

ここが最大の山場です。

「住みにくい」「工事費が上がるはず」だけでは、価格に効いたかどうかが曖昧になりがちです。

成約事例の比較、複数社の査定書、必要なら鑑定評価、地盤改良見積と価格転嫁の説明など、最終的に「売買価格の世界」へ落とし込みます。

これらを揃えた上で初めて、調査や審判で評価減の主張が戦える形になります。

想う相続税理士

土地の評価は、通達の当てはめだけでなく、「その土地が相続開始日にどう使われ、買い手の価格判断にどう影響するか」を証拠で示せるかが勝負です。

もし相続で土地を引き継ぐ予定がある方は、気になる事情(通路の扱い、振動や墓地、地盤など)がある段階で、早めに専門家へ相談して整理しておくと安心です。