相続税専門税理士の富山です。
今回は、非上場株式(取引相場のない株式)を「純資産価額方式」で評価する場合に、会社が過去に「株式交付」等により他社の株式を取得している場合の注意点について、お話します。
出典:TAINS(趣旨説明評価0143)(一部抜粋加工)
「財産評価基本通達等の一部改正について」通達のあらましについて(情報)
取引相場のない株式の評価(株式交付があった場合の評価)
資産評価企画官情報第3号 資産課税課情報第15号 令和3年7月6日
国税庁資産評価企画官 国税庁資産課税課
非上場株の評価は「会社の過去の取引」で動くことがある
相続等で株式を受け継ぐ場合、上場株式は市場価格があるため比較的イメージしやすいです。
一方で、非上場株式は市場価格がないため、一定のルールに沿って評価額を計算します。
その評価方法の一つが「純資産価額方式」で、ザックリ言うと「会社の資産-負債」を土台にして株価を出す考え方です。
ここで厄介なのが、会社が過去に組織再編やM&Aをしていて、資産や株式を「著しく低い価額(帳簿価額)」で受け入れているケースです。
上記の情報では、現物出資や合併、株式交換、株式移転などで、相続税評価額と帳簿価額の差額が意図的に作られ、その差額に対応する法人税額等相当額を控除できてしまうと評価が不合理に下がり得る、という問題意識が示されています。
評価会社が有する資産の中に、現物出資若しくは合併により著しく低い価額で受け入れた資産又は株式交換若しくは株式移転により著しく低い価額で受け入れた株式(現物出資等受入れ資産がある場合には、その現物出資、合併、株式交換又は株式移転(現物出資等)の時のその資産の価額(相続税評価額)とその現物出資等による受入れ価額(帳簿価額)との差額(現物出資等受入れ差額)に対する法人税額等相当額は、純資産価額の計算上控除しないこととしているが、株式交付により著しく低い価額で受け入れた株式がある場合も同様とすることとした。
つまり、非上場株式の評価は、「今の決算書だけ」を見ても完全な評価はできず、「過去に何を、いくらで受け入れたか」が関係してくることがあるのです。
相続人等の立場でここまで把握するのは簡単ではありませんが、株価が大きく動く分、入口での確認が重要になります。
問題となる株式交付等とは?
株式交付は、会社が他社を子会社化するために、他社株式を譲り受け、その対価として自社株式を交付する制度です。
株式交付とは、株式会社が他の株式会社をその子会社(法務省令で定めるものに限る。)とするために当該他の株式会社の株式を譲り受け、当該株式の譲渡人に対して当該株式の対価として当該株式会社の株式を交付することをいう(会社法2三十二の二)。
相続税の話なのに会社法の制度が出てくる理由は単純で、株式交付の結果として「評価会社の資産の中に、著しく低い帳簿価額で受け入れた株式」が生じることがあるからです。
純資産価額方式は会社の資産内容に連動するため、こうした「受入れ価額の低さ」が評価計算に影響します。
そこで、現物出資等で問題になっていたのと同じ発想で、株式交付でも一定の場合は評価計算上の「控除を認めない」という整理が入っています。
上記の情報では、評価が下がってしまうこと自体が「適正な時価とは言い難い」ため是正する趣旨だ、とはっきり書かれています。
株式交付はM&Aを円滑にする制度ですが、相続が起きた場合には「評価の前提条件」にもなり得る点が、一般の方にとっては盲点になりやすいところです。
会社の過去の組織再編の歴史を確認する
相続税の財産評価の局面では、まず「その株式が非上場株式かどうか」を確認し、非上場株式なら「評価方法(類似業種比準方式か純資産価額方式か等)」の確認に入ります。
このとき、純資産価額方式が関係する(または併用される)可能性がある場合には、会社が過去に「著しく低い価額で受け入れた資産や株式」を持っていないかを確認することが重要です。
さらに、上記の情報には、株式交付の時点の相続税評価額よりも、相続等の課税時期の相続税評価額が低い場合の考え方にも言及があり、受入れ後の価値の下落を考慮して調整する点にも注意が必要です。
想う相続税理士
「会社が過去に他社を買収したり子会社化したりしたことがあるか?」「あるとしたら、現金で買ったのではなく、自社株式を渡して相手会社の株式を取得する形(株式交付など)だったか?」「持株会社化や組織再編(現物出資、株式交換、株式移転など)をしたことがあるか?」を確認しましょう。
