【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続税を親のお金で納付すると贈与税が課税される?

相続税専門税理士の富山です。

相続税の申告をご依頼いただき、代表者の方に納付書を全部お渡しする際、「この相続税は私の方で全部まとめて払ってしまっても大丈夫でしょうか?」と聞かれることがあります。

今回は、お父様の相続税申告の際、お母様のお金で相続税を納付した方に関する裁決事例について、お話します。

出典:TAINS(F0-3-681)(一部抜粋加工)
平31-02-07裁決


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他の相続人に相続税を代わりに払ってもらったら贈与税の課税対象

相続税法(一部抜粋加工)
第8条
対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で債務の免除、引受け又は第三者のためにする債務の弁済による利益を受けた場合においては、当該債務の免除、引受け又は弁済があつた時において、当該債務の免除、引受け又は弁済による利益を受けた者が、当該債務の免除、引受け又は弁済に係る債務の金額に相当する金額(対価の支払があつた場合には、その価額を控除した金額)を当該債務の免除、引受け又は弁済をした者から贈与(当該債務の免除、引受け又は弁済が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなすただし、当該債務の免除、引受け又は弁済が次の各号のいずれかに該当する場合においては、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。
一 債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、当該債務の全部又は一部の免除を受けたとき。
二 債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その債務者の扶養義務者によつて当該債務の全部又は一部の引受け又は弁済がなされたとき。

相続税を代わりに払ってもらったら、それは贈与を受けたものとみなされます。

ただし、お金がなく、一定の要件に該当する場合には、この取扱いの適用対象から除外されます。

立て替えてもらったのであれば贈与にならない?

この採決では、納税者側、税務署側から次のような主張がありました。

納税者側(請求人ら)

■■■■■は、相続税の申告書の作成に追われて納税資金を準備できなかったことから、後で返還することを約束した上で母に一旦立て替えてもらったにすぎず、母が■■■■■の本件相続税額の納税義務を引き受けたものではないから、相続税法第8条の規定は適用されない。

税務署側(原処分庁)

本件相続税額の納付は、母名義の普通預金口座から出金された金銭を原資としており、■■■■■が本件相続税額に相当する金銭を母に返済したとは認められないことによれば、母が■■■■■の本件相続税額の納税義務を引き受けたといえるから、相続税法第8条の規定により、■■■■■が本件相続税額に相当する額を贈与により取得したものとみなされる。

お金があったのに立て替えてもらった?

次のような結論となりました。

前記1の(4)のハのとおり、■■■■■は、本件相続に係るその負担部分である本件相続税額について、母名義の普通預金口座から出金された金銭を原資として納付しているところ、上記イの(ニ)のとおり、■■■■■は、本件相続税額が納付された日の前日において7,000万円を超える預貯金等を有していたのであるから、自分で納税資金を準備することが困難であったとは認められない

立て替えてもらった、というのであれば、その立て替えてもらうことになった経緯・事情の説明が必要です。

立て替えてもらったのであれば返済が必要

仮に何らかの事情で準備が困難であったとしても、返還約束があったというのであればその約束どおり返還するのが通常であると考えられるのに、本件相続税額が納付された平成25年5月24日以降平成27年9月末までの間において、上記イの(ニ)の■■■■■が取引していた銀行等の預貯金等口座から出金された金銭が母名義の預貯金等口座へ移動している事実はないから(後記ハの平成26年1月21日の4,050,000円の移動を除く。)、■■■■■は、これを母に返還していないと認められる。
そうすると、母が■■■■■の負担部分である本件相続税額を納付するに当たり、■■■■■と母の間にその返還約束はなかったと認められるから、相続税法第8条の規定により、本件相続税額の納付については、その納付の時点で贈与により取得したものとみなされる。
したがって、■■■■■は、本件相続税額の納付により、相続税法第1条の4第1号に規定する「贈与により財産を取得した」といえる。

立て替えてもらった、というのであれば、その返済をしている必要があります。

想う相続税理士

「私は贈与を受けていません。立て替えてもらっていただけです。」と主張するのであれば、その主張が本当である、確からしい、と税務署に信じさせる材料が必要です。

親族間の取引は、「ナアナア」になりがちです。

返そうと思っていた(実際に「後で絶対に返す」と言った)としても、どこかで甘えが生じる場合がありますし、結果的にはやっぱり返さない、ということも起き得ます。

第三者間だったら大問題になりますが、親族間だったら許されることもあるでしょう。

それは税務署も分かっています。

さらに税金(贈与税)を払うことにならないように、相続税は自分のお金で納付しましょう。