相続税専門税理士の富山です。
今回は、下記の裁決事例に基づき、失踪宣告のない不在配偶者の取扱いと、相続時精算課税(相続時精算課税制度)の権利義務の承継、さらに遺産分割に伴う代償金が相続税の債務控除になるかという点について、お話します。
出典:TAINS(J137-3-05)(一部抜粋加工)
令06-10-07公表裁決
どんな事案で、最終的にどう判断されたのか?
亡くなった方(Aさん)が生前に長女(Bさん)に対して相続時精算課税を選択して財産を贈与していました。
BさんはAさんより先にお亡くなりになり、Bさんの配偶者(Cさん)は所在不明のままでした。
Bさんの戸籍には離婚の記載がなく、Cさんについて失踪宣告もされていませんでした。
Cさんは生存しているものと推定され、Bさんの相続人に当たるとされました。
その結果(相続時精算課税適用者の相続人が特定贈与者のみである場合には、相続時精算課税の適用に伴う権利義務は消滅することになるのですが、そうではないため)、Bさんが相続時精算課税で取得した贈与財産の価額は、特定贈与者であるAさんの相続税の課税価格へ加算されるものとされました。
また、Bさん相続の遺産分割で取り決めた「不在配偶者(Cさん)が出現し請求したら支払う」とする代償金については、Aさん相続の相続開始時点で条件が成就していないため、「確実と認められる」債務に当たらず、債務控除は不可と判断されています。
行方不明でも失踪宣告がなければ配偶者は相続人と推定され、相続時精算課税の権利義務はその配偶者へ承継される、ということです。
そして、代償金は「将来請求があれば」という停止条件付なので、相続開始時点で控除できない、ということです。
なぜ配偶者は「相続人」と推定されたのか
民法上は失踪宣告がない限り生存が推定される、としています。
また、戸籍に離婚の記載がなければ、法的には婚姻関係が存続している、としています。
本件では、戸籍にBさんとCさんの離婚記載がなく、相続放棄の申述も確認されなかったため、CさんはBさんの相続開始時にBさんの相続人であるとされました。
代償金が債務控除できなかった理由
相続税の債務控除を適用するためには、その債務が「相続開始時に現に存する」「確実と認められる」ことが必要です。
「出現したら」「請求があれば」という停止条件付の支払義務は、条件が成就していない限り、相続開始時点では確実な債務とは言えません。
本件では、CさんはAさん相続の相続開始時までに出現しておらず、請求もしていませんでした。
そのため、Aさんの相続税申告において代償金相当額の債務控除は否認されています。
想う相続税理士
しかし、その子が相続時精算課税適用者である場合には、相続時精算課税の適用に伴う権利義務は、その子の配偶者が相続人として承継することになりますので、ご注意を。