相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続時精算課税による贈与を受けていた方がお亡くなりになり、その相続人の中に特定贈与者の方がいる場合の、相続時精算課税の適用を受けていたことに伴う相続税の納税義務等の承継について、お話します。
相続時精算課税による贈与には相続の時に相続税がかかる
長男Aさんが、父Bさんから土地Cを相続時精算課税による贈与により取得したとします。
この土地Cは、父Bさんの相続の際、相続税の計算上、相続財産に加算されます(令和6年分以後の贈与については基礎控除額を控除した後の金額が加算されます)。
つまり、相続税がかかる(相続税が発生するのであればその納税義務が生じる)のです。
長男Aさんが父Bさんよりも先に亡くなった場合でも、その相続税の納税義務は消えません。
相続税法(一部抜粋)
第21条の17 相続時精算課税に係る相続税の納付義務の承継等
特定贈与者の死亡以前に当該特定贈与者に係る相続時精算課税適用者が死亡した場合には、当該相続時精算課税適用者の相続人(包括受遺者を含む。以下この条及び次条において同じ。)は、当該相続時精算課税適用者が有していたこの節の規定の適用を受けていたことに伴う納税に係る権利又は義務を承継する。
長男Aさんが父Bさんから土地Cを相続時精算課税による贈与により取得したことに伴う相続税は、長男Aさんの相続人が承継します。
相続人が父母の場合にはどうなる?
長男Aさんの相続人が、父Bさんと母Dさんだったらどうなるでしょうか?
ただし、当該相続人のうちに当該特定贈与者がある場合には、当該特定贈与者は、当該納税に係る権利又は義務については、これを承継しない。
父Bさんは納税義務等を承継しません。
母Dさんが土地Cに係る相続税の納税義務等を承継します。
もし、長男Aさんが母Dさんから土地Eを相続時精算課税による贈与により取得していた場合、その土地Eに係る相続税の納税義務等は父Bさんが承継することになります。
相続税の納税義務等を承継する方が複数いる場合
長男Aさんが、祖父Fさんから土地Gを相続時精算課税による贈与により取得し、祖父Fさんより先に亡くなった場合、土地Gに係る相続税の納税義務等は父Bさん・母Cさんが承継します。
この場合、その承継割合は話し合いで決めるのではなく、法定相続分等で承継することになります。
3 国税通則法第5条第2項及び第3項(相続による国税の納付義務の承継)の規定は、この条の規定により相続時精算課税適用者の相続人が有することとなる第1項の納税に係る権利又は義務について、準用する。
国税通則法(一部抜粋)
第5条 相続による国税の納付義務の承継
2 前項前段の場合において、相続人が2人以上あるときは、各相続人が同項前段の規定により承継する国税の額は、同項の国税の額を民法第900条から第902条まで(法定相続分・代襲相続人の相続分・遺言による相続分の指定)の規定によるその相続分により按分して計算した額とする。
想う相続税理士