相続税専門税理士の富山です。
今回は、個人事業主の事業用の土地を相続する場合の注意点について、お話します。
相続税の申告における小規模宅地等の特例とは?
相続税の計算においては、一定の居住用または事業用の宅地等について、その評価額を80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があり、大きくは「(1)特定事業用宅地等」「(2)特定同族会社事業用宅地等」「(3)特定居住用宅地等」「(4)貸付事業用宅地等」の4つの適用パターンがあります。
特定事業用宅地等は、亡くなった方等の事業を継続することが要件
「(1)特定事業用宅地等」の場合、
- 亡くなった方の事業の用に供されていた土地
- 亡くなった方の同一生計親族の事業の用に供されていた土地
②については、その同一生計親族がそのまま事業を継続すればいいのですが、①の場合には、下記の記事でお話したとおり、「その土地の上で営まれていた亡くなった方の事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、その申告期限までその事業を営んでいること」が要件となります。

事業を継続できない人は取得しても適用できない?
個人事業主であるAさんが亡くなりました。
相続人は長男Bさん・二男Cさんです。
Aさんは常々、自分が亡くなったら二男Cさんに事業を継いでもらいたい、とおっしゃっていて、長男Bさん・二男Cさんもそれに同意していました。
そこで、Aさんが事業を営んでいた店舗敷地は、二男Cさんが相続する方向で検討していました。
ところが、二男Cさんは遠方の大学に通う大学生です。
現時点では、とてもAさんに代わって事業主を務めることはできません。
このような場合、相続税の申告において、Aさんが事業を営んでいた店舗敷地について特定事業用宅地等として小規模宅地等の特例を適用するためには、その店舗敷地を長男Bさんが相続して、長男Bさんが事業を継ぐしかないのでしょうか?
租税特別措置法関係通達(一部抜粋)
69の4-20 宅地等を取得した親族が事業主となっていない場合
措置法第69条の4第3項第1号イに規定する事業を営んでいるかどうかは、事業主として当該事業を行っているかどうかにより判定するのであるが、同号イに規定する親族が就学中であることその他当面事業主となれないことについてやむを得ない事情があるため、当該親族の親族が事業主となっている場合には、同号イに規定する親族が当該事業を営んでいるものとして取り扱う。
二男Cさんが就学中であるため、やむを得ず事業主になれず、長男Bさんが事業主となっている場合には、二男Cさんが事業を営んでいるものとして、二男Cさんがその店舗敷地を相続し、小規模宅地等の特例を適用することが可能です。
想う相続税理士
(注) 事業を営んでいるかどうかは、会社等に勤務するなど他に職を有し、又は当該事業の他に主たる事業を有している場合であっても、その事業の事業主となっている限りこれに当たるのであるから留意する。