相続税専門税理士の富山です。
今回は、サブリースによる不動産賃貸と相続税対策について、お話します。
サブリースとは?
「サブリース契約」というものがあります。
アパートオーナーが入居者に直接アパートを貸すのではなく、アパートオーナーと入居者の間にサブリース事業者が入るのです。
つまり、サブリース業者がアパートをアパートオーナーから一括で借り上げ、サブリース業者が入居者にアパートを貸す(転貸する=サブリース)のです。
アパートが空室になった場合
アパートの建物と敷地は、入居者(借り手)がいれば、それぞれに入居者の権利が及ぶため、建物は貸家評価(70%評価)、敷地は貸家建付地評価(借地権割合が40%であれば88%評価)となります。
しかし、入居者がいなければ、「ただ持っている建物と土地」ということになりますので、自用家屋評価(100%評価)・自用地評価(100%評価)となります(いわゆる「一時的な空室」の場合を除く)。
サブリース契約の場合はどうなるでしょうか?
入居者がいなくても、建物はサブリース業者が借りているため、貸家評価・貸家建付地評価となります。
相続税対策として建物を贈与した場合
相続税対策としての生前贈与の一環で、父Aさんが長女Bさんに、自分が所有しているアパートの贈与を検討したところ、土地と建物の両方を贈与すると、贈与税が高くなってしまうため、建物のみを贈与することにしたとします。
贈与をすると、長女Bさんが父Aさんの建物を借りている、ということになります。
親子間なので、父Aさんが長女Bさんから地代を取らない、つまり、土地をタダで貸す、ということもあるでしょう。
通常、土地をタダで貸す場合には(「使用貸借」と言います)、自用地評価(100%評価)になるのですが、贈与があっても敷地に対する入居者の権利が消える訳ではないため、貸家建付地評価が継続します。
想う相続税理士秘書

ただし、入居者が引っ越してしまうと(退去してしまうと)、入居者の権利は消えてしまいますので、自用地評価(100%評価)となります。
この贈与した建物がサブリース契約だったらどうでしょうか?
建物を直接借りているのはサブリース業者です。
入居者が引っ越しても、サブリース業者に対するアパートの貸付けは継続します。
つまり、敷地に対するサブリース業者(借り手)の権利は消えませんので、貸家建付地評価が継続します。
サブリース業者は利益を取る
当たり前ですが、サブリース業者は、1部屋5万円で借りて、入居者に5万円で貸す、というようなことはしません。
1部屋4万円で借りて、入居者に5万円で貸したりして、この場合であれば1万円の利益を得ます。
つまり、アパートオーナーは、サブリース契約を結ぶことで、利益が減ります(いろいろやってもらう分、ラクな面もあります)。
それが嫌な場合には、同族会社にサブリース業者になってもらいましょう。
そうすれば、利益が第三者に渡らず、所得分散による節税で手取りが増える場合もあります。
そして、相続時の空室リスクや、建物贈与後の入居者の退去による自用地評価への変更を避けることができます。
想う相続税理士