相続税専門税理士の富山です。
今回は、債務控除について、お話します。
相続税は正味財産に対して課税される
国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋)
No.4126 相続財産から控除できる債務
概要
相続税を計算するときは、被相続人が残した借入金などの債務を遺産総額から差し引くことができます。
Aさんが亡くなり、長男Bさんが1億円の土地を相続しました。
さらに、8,000万円の銀行借入金も引き継ぐことになりました。
このような場合、1億円に対して相続税を計算するのではなく、1億円から8,000万円を控除した2,000万円に対して相続税を計算します。
1億円の財産を相続しても、銀行借入金の返済によりそのうちの8,000万円がなくなってしまうんだから、残りの2,000万円に対して相続税を課税しましょう、というような感じです。
一定の債務や葬式費用は、このように遺産総額から控除することができます(これを「債務控除」と言います)。
想う相続税理士秘書
そして、亡くなった方の税金も、この債務控除の対象となります。
死亡日時点で確定していなくてもOK
相続税法施行令(一部抜粋)
第3条 債務控除をする公租公課の金額
法第14条第2項に規定する政令で定める公租公課の額は、被相続人(遺贈をした者を含む。以下同じ。)の死亡の際納税義務が確定しているもののほか、被相続人の死亡後相続税の納税義務者が納付し、又は徴収されることとなつた次に掲げる税額とする。
Aさんが令和7年1月31日に亡くなりました。
Aさんは大地主だったので、令和7年4月15日に、長男Bさんのところに年額500万円の固定資産税の納税通知書が届きました。
この500万円の固定資産税は、亡くなった令和7年1月31日時点で金額が分からなくても、固定資産税の賦課期日であるその年の1月1日(今回の分は令和7年1月1日)に納税義務が成立しているため、債務控除の対象となります。
また、Aさんは不動産賃貸業を営んでいて、毎年、所得税の確定申告をしていました。
地代家賃収入が多額であるため、令和7年分の確定申告も、1ヶ月分(令和7年1月1日から亡くなった令和7年1月31日までの期間の分)にもかかわらず、100万円の納税となります。
この100万円の所得税は、亡くなった令和7年1月31日時点では(当然まだ確定申告をしていないので)金額が分かりませんが、債務控除の対象となります。
附帯税等に注意
税金を申告期限までに申告しなかったり、納期限までに納付しなかったりすると、本税以外に、例えば「延滞税」のような附帯税等の支払が生じる場合があります。
ただし、相続人(法第3条第1項に規定する相続人をいい、包括受遺者を含む。以下同じ。)の責めに帰すべき事由により納付し、又は徴収されることとなつた延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する税額(地方税法の規定による督促手数料、延滞金、過少申告加算金、不申告加算金、重加算金及び滞納処分費の額を含む。)を含まないものとする。
この附帯税等は、「亡くなった方」が「申告しなかった・納付しなかった」ことにより発生した分については、債務控除の対象となります。
附帯税等は本税ではないから債務控除の対象にならない、という訳ではありません。
ただし、「相続人等」が「申告しなかった・納付しなかった」ことにより発生した分については、債務控除の対象となります。
想う相続税理士
この場合には、「亡くなった方(Aさん)」が「『ちゃんと』申告しなかった」訳ですから、所得税の本税の追加納付分のみならず、過少申告加算税等の附帯税も、債務控除の対象となります。
また、Aさんが口座振替で固定資産税を納付していて、相続開始に伴い口座が凍結されたため、固定資産税の引落しができなくなり、市区町村役場から納付書が送られてきて、それを使用して相続人等が納付する場合、本税以外の追加支払が生じた場合には、その追加支払分は、債務控除の対象とはなりません(追加支払が生じたのは、納税義務を引き継いだ「相続人等」が期限までに「『ちゃんと』納付しなかった」のが原因だからです)。