相続税専門税理士の富山です。
今回は、贈与税の配偶者控除について、お話します。
贈与税の配偶者控除の適用要件
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与をした場合には、贈与税の計算において、一定の要件を満たせば、基礎控除額110万円とは別に、課税価格から最高2,000万円まで控除(配偶者控除)することができる「贈与税の配偶者控除」という特例を使うことができます(贈与税の申告をすることが要件となっています)。
贈与税の配偶者控除は生前贈与加算の対象外
国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋加工)
No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
概要
相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した一定の人が、被相続人から加算対象期間(現在は相続開始前3年以内)に暦年課税に係る贈与によって取得した財産があるときは、その人の相続税の課税価格にその財産の贈与時の価額を加算します。
(これは夫婦間だけの話ではありませんが)夫が亡くなり、妻がその相続で財産を取得した場合、その妻が相続開始前3年以内に夫から暦年課税による贈与により取得した財産があるときは、その贈与財産の贈与時の価額を相続税の課税価格に加算して相続税を計算します(「生前贈与加算」と言います)。
しかし、その贈与が上記の「贈与税の配偶者控除」を適用した特例贈与である場合には、生前贈与加算の対象外となります。
加算しない贈与財産の範囲
被相続人から生前に贈与された財産であっても、次の財産については加算する必要はありません。
(1)贈与税の配偶者控除の適用を受けているまたは受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額
3年前の年に3年以内と3年超の特例適用贈与がある場合
令和7年4月30日に夫が亡くなったとします。
妻は夫から、令和4年3月31日に1,000万円のイ土地の贈与を受け、令和4年5月31に2,500万円の現金の贈与を受けたとします。
妻は、贈与を受けた2,500万円の現金を使い、イ土地の上にご自宅を建築し、住み始めたとします。
この場合、令和4年3月31日のイ土地の贈与は相続開始前3年以内の贈与に該当しないため、生前贈与加算の対象外です。
それに対して、令和4年5月31の2,500万円の現金の贈与は相続開始前3年以内の贈与に該当し、生前贈与加算の対象となります。
妻は、令和4年分の贈与税の申告において、1,000万円+2,500万円=3,500万円から配偶者控除2,000万円を控除して贈与税を計算・申告・納付しています。
この2,000万円は、相続税の計算上、
- 按分して1,000万円と2,500万円の両方から控除する
- 先に贈与した1,000万円から控除する(残りは2,500万円から控除する)
- 生前贈与加算の対象となる2,500万円から控除する
相続税法基本通達(一部抜粋加工)
19-8 贈与税の配偶者控除の適用順序
被相続人の配偶者が、当該被相続人から相続開始の日の属する年の3年前の年に2回以上にわたって法第21条の6第1項の規定による贈与税の配偶者控除(以下21-8の3までにおいて「贈与税の配偶者控除」という。)の適用を受けることができる居住用不動産又は居住用不動産の取得のための金銭(以下19-8において「居住用不動産等」という。)の贈与を受け、当該年分の贈与税につき贈与税の配偶者控除の規定の適用を受けている場合で、当該贈与により取得した居住用不動産等の価額の合計額が贈与税の配偶者控除を受けることができる金額を超え、かつ、当該贈与に係る居住用不動産等のうちに相続開始前3年以内の贈与に該当するものと該当しないものとがあるときにおける法第19条第1項の規定の適用に当たっては、贈与税の配偶者控除は、まず、相続税の課税価格の計算上、相続開始前3年以内の贈与に該当する居住用不動産等から適用されたものとして取り扱うものとする。
「③生前贈与加算の対象となる2,500万円から控除する」ということになります。
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