【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続税で山林・立木の評価額が高過ぎると感じたら?鑑定の前に知っておきたい重要ポイント

相続税専門税理士の富山です。

今回は、山林および立木の相続税評価において、財産評価基本通達による評価額の妥当性が争われた判決事例を解説します。

鑑定評価額が実態をより正確に反映しているかが争点となったケースです。

出典:TAINS(Z261-11747・Z262-11933・Z262-12067)(一部抜粋加工)
平成23年9月2日判決・平成24年4月20日判決・平成24年10月12日決定

相続税申告における山林・立木の評価も「鑑定なら勝てる」とは限らない
以前にもブログで取り上げた判決ですが、今日(3月21日)は国際森林デーですので、視点を変えて、再度取り上げます。

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相続税の「時価」は自由に決められるわけではない

ホームズ、山林や立木って、普通の宅地や預金より値段が分かりにくいよね。
そうすると、相続税の申告でも、納税者が「うちの山はそんなに高くない」と言えば、その金額で通ることもあるのかい?
ワトスン君、そこが今回の大事な点なんだよ。
相続税では、財産は相続開始時の「時価」で評価するのが原則だけれど、その時価を各人が好きに決めてよいわけではないんだ。
実務では、財産評価基本通達や各国税局の評価基準に基づいて、統一的に評価する考え方がとられているんだよ。

なるほど。
つまり、「時価」といっても、気分や感覚で決める話ではなく、一定のルールに沿って考えるということだね。
そのとおりだよ。
そして、この判決事例では、裁判所も、山林や立木について通達に基づく評価方法には一般的な合理性がある、という見方を示しているんだ。
だから、単に「実際にはもっと安くしか売れないはずだ」と言うだけでは足りず、その評価を崩すだけの具体的な根拠が必要になるんだよ。

本件は、控訴人らが、母である亡戊が平成14年3月27日死亡したことによりその遺産を相続し、相続税の申告をしたところ、苫小牧税務署長によって平成18年1月17日付けで控訴人らに対して相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件課税処分」という。)がされたので、本件課税処分のうち、共同相続された遺産の一部である山林及び立木の本件課税処分における評価額が時価を超えているとして、本件課税処分の一部取消しを求めた事案である。

相続人側は、「税務署の評価は高過ぎる」と考えて争ったわけだね。
そうなんだ。
相続税の評価では、特に山林のように市場価格が見えにくい財産ほど、「本当にこの評価でいいのか」が問題になりやすいんだよ。
だからこそ、この判決事例は、一般のご家庭でも知っておく価値があるんだ。

鑑定評価を出しても当然に通るわけではない

ホームズ、それでも不動産鑑定士の鑑定書があれば強そうじゃないか。
専門家が評価したのなら、税務署の金額より信用されそうにも思えるけれど。
そこが落とし穴なんだよ、ワトスン君。
今回の判決事例では、裁判所は鑑定評価そのものを頭から否定したわけではない。
けれども、その鑑定の判断過程に問題があるなら、その鑑定額をそのまま採用することはできない、と判断したんだ。

つまり、「鑑定書がある」という事実だけでは足りず、その中身まで見られるわけだね。
まさにそのとおりだよ。
たとえば、規模が大きいから大きく減価したとか、売却まで数年かかることを前提に減価したとか、あるいは相続時点からかなり離れた時点の取引事例をもとに遡って調整したとか、そうした判断が本当に妥当なのかが厳しく見られるんだ。
裁判所は、その判断過程に無理があれば、通達評価の合理性を覆すほどの証拠にはならないと考えたんだよ。

鑑定人が評価していても、それだけで安心はできないんだね。
そうなんだ。
専門家の意見はもちろん重要だけれど、税務では「どういう資料を使い、どういう手順で、どこまで合理的に組み立てたか」が非常に重い。
相続税の申告で鑑定評価を使うなら、結論だけでなく、その組み立てまで十分に吟味しなければならないんだよ。

「売れる値段」と「税務上の時価」は違う

ホームズ、この話は北海道の広い山林の事案のようだけれど、一般の家庭の相続にも関係あるのかい?
もちろんだよ。
一般の相続でも、「こんな土地はすぐに売れない」「買い手が少ない」「実際にはもっと安いはずだ」という感覚を持つことは珍しくない。
けれども、その感覚がそのまま相続税評価に採用されるとは限らないんだ。

たしかに、実際に処分するときの苦労と、申告で使う評価額は、似ているようで同じではなさそうだね。
そのとおりだよ。
しかも、立木についても、相続時の年分の標準価額を基準に評価するのが合理的とされ、その後の年度で標準価額が変わったからといって、直ちに過去の評価が不合理になるわけではない、と判断されている。
後から相場や基準が変わったことを理由に、当時の申告を簡単に見直せるわけではないんだ。

すると、相続が起きた時点で、どの資料に基づいて、どの基準年で、どのように評価するかがとても重要なんだね。
まさにそこなんだ。
山林や雑種地、広大な土地、あるいは評価の難しい地方の不動産では、感覚的に「高すぎる」と思っても、税務で主張が通るとは限らない。
だからこそ、相続税の申告では、単に安く見積もる発想ではなく、その評価が通達評価よりも合理的であると説明できるかまで見据える必要があるんだよ。

想う相続税理士

山林や立木のように評価が難しい財産は、「実際には売れにくいから安いはずだ」という感覚だけで相続税評価を決めるのは危険です。

通達評価を修正したい場合には、その根拠や判断過程まで含めて、税務上きちんと説明できるかどうかが非常に重要ですので、ご注意を。