【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

遺言により同族会社に対する貸付金を債権放棄した場合について考える

相続税専門税理士の富山です。

今回は、遺言により同族会社に対する貸付金を債権放棄した場合の、税務上の取扱いについて、考えてみたいと思います。

今回考える場面
A社の株主Bさんが死亡
BさんはA社に対して貸付金1,000万円を有していたが、遺言で債権放棄
Bさんの相続人は長男Cさんのみで、長男CさんもA社の株式を所有

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貸付金1,000万円は相続税の課税対象?

通常、会社に対する貸付金は、亡くなった方の財産として、相続税の課税対象となります。

相続人がその貸付金を引き継げば、会社に返済を求めることで現金を受け取ることができます(もっとも、会社側に資金余力がなければ実際の回収は難しくなります)。

今回のケースでは、遺言による債権放棄により、その貸付金を長男Cさんが相続により取得することができなくなりますので、A社に対する貸付金が相続税の課税対象になる(唯一の相続人である長男Cさんが貸付金1,000万円に対して相続税の課税を受ける)、ということはないものと思われます。

長男Cさんには間接的に相続税の課税が生じる?

ただし、この遺贈による債権放棄により、長男Cさんに相続税の課税が生じる可能性があります。

遺言による債権放棄により、長男Cさんが所有するA社株式の価値が上がる場合、その価値上昇分は、長男CさんがAさんから遺贈により取得したものとみなされるからです。

相続税法(一部抜粋加工)
第9条
対価を支払わないで利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額を当該利益を受けさせた者から贈与(当該行為が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。

相続税法基本通達(一部抜粋加工)
9-2 株式又は出資の価額が増加した場合
同族会社の株式の価額が、例えば、次に掲げる場合に該当して増加したときにおいては、その株主が当該株式の価額のうち増加した部分に相当する金額を、それぞれ次に掲げる者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。この場合における贈与による財産の取得の時期は、債務の免除があった時によるものとする。
(3) 対価を受けないで会社の債務の免除があった場合 当該債務の免除をした者

相続で取得するA社株式の評価は?

Aさんが所有していたB社株式については、唯一の相続人である長男Cさんが相続することになりますが、相続税の申告において、このB社株式を評価する場合、この債務免除が純資産価額の計算に影響を与えることがあるものと思われます。

純資産価額は、原則として、「課税時期(亡くなった日)」における各資産及び負債等の金額をベースに計算するからです。

A社にも課税が生じる?

遺贈による債権放棄により、A社の決算書には「債務免除益」が計上されます。

「お金を返さなくてよくなった」というトク(利益)です。

この債務免除益は、法人税の課税対象となります。

想う相続税理士

債権放棄がどこにどのように影響するのか、整理しておきましょう。

それは、相続税対策として生前に債権放棄をする場合も同様です。